原著のハードカバー版は、イタリア版がミラノのエレクタ社から1977年に、英語版がニューヨークのエイブラハム社から1980年に出版されている。翻訳において直接参照したペーパーバック版はリッツォーリ社から1987年に出ている。●共著者のひとりデイヴィド・ワトキンは新古典主義の専門家で、トマス・ホゥプ、コッカレルなどにかんするモノグラフを書き、またMorality and Architecture,1977(榎本弘之訳『モラリティと建築』)やThe Rise of Architectural History, 1980(桐敷真次郎訳『建築史学の興隆』)においてペヴスナーらによる近代建築解釈の方法論を批判しつつ、English Architecture, a Concise History, 1979(『イングランドの歴史、その概略』邦訳なし)ではイングランドの通史を新たな観点から書き、またGerman Architecture and the Classical Ideal 1740-1840, 1987(『ドイツ建築と古典的理想1740-1840』邦訳なし)でふたたび新古典主義に触れるなど精力的に執筆活動を展開している。の翻訳をとおして知られているが、このほかにもEnglish Architecture, 1977などがある。もうひとりのロビン・ミドルトンはThe Beaux-Arts Tradition and nineteenth-century French Architecture, 1982(『ボザールの伝統と19世紀フランス建築』邦訳なし)など、フランスの近世建築にかんする研究が多い。●ペヴスナーやサマーソン、あるいはカウフマンらが近代建築の理念を延長するかたちでヨーロッパ建築の歴史を読み解いたのに対して、彼らはいちど近代主義イデオロギーを批判し、それからやや距離をとりながら歴史叙述をおこなっているように思える。すくなくとも上記の文献においては、モダニズムのバイアスを経由しないでより直接的に18-19世紀の建築の諸理念に対峙しようとしているのは顕著である。