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2013.03.04

澤田肇『フランス・オペラの魅惑』

著者の澤田先生より賜りました。ありがとうございます。

留学していたころ今のオペラ・ガルニエで《トリスタンとイゾルデ》を観たり、ディープなファンではないのでまったく体系的ではないが、親戚を案内してバスティーユのほうで《トスカ》を観たりもした。2年ほど前、モダンな演出の《魔笛》をみてがっかりしたことがあったが、ミロス・フォアマンの《アマデウス》にあるような演出のものを観たいのになどと思ってしまう、このあたりがぼくの素人感性である。

そもそもオペラ座というのはぼくにとってはシャルル・ガルニエの建築としてまずプリントされ、つぎにオペラ座だからオペラなんだという順番であったので、本末転倒、遠近法の逆転なのではあるが、じつをいうとバレエのほうが楽しめる。ドロテ・ジルベールは華があっていい。《ライモンダ》はほんとうによかったなあ。でもだいぶ系統はちがうけど、2カ月まえにガルニエで観たウイリアム・フォーサイスは素晴らしかった。

というようにまったく系統だった観劇でないのは、研究旅行のついでに観ているからなのだが、まあ未熟な趣味のせいでもあるのだろうね。なにしろ、こっそり演目にあわせて海外出張の日程を調節している大学教授もいると噂には聞くのであるが、そこまでの根性はない。

だからこのようにフランスに的を絞り、博覧会や政治といった背景をおさえつつ、文化史としてのオペラを描く本は、ぼくにとってはほんとうに教科書である。ちなみに2年前、澤田先生にはシンポジウムにご招待していただいて、そのなかでぼくはサクレ=クール建設の話をしたのだが、この聖堂の計画当初、ガルニエのオペラ座をサクレ=クールに改装する案もあった。ぼくは建築畑の話として、教会建築の文脈でさらっとのべただけであった。澤田先生はこの逸話にも触れられていて(44頁)、つまり劇場史あるいは音楽史のなかでもこの逸話は有名なものであったということで、他分野の専門家がどんなことを知っているか、まったく無頓着であったことに反省する機会にもなった。とはいっても反省はできても事前に予期はできないのだけれど。

本書で選ばれている「20の傑作」のなかで観てみたいのはメシアン《アッシジの聖フランチェスコ》であろうか。《時の終わり・・・》はときどき愛聴しているし、カトリック信仰を背景にして音楽にとりくむ彼をみていると、いわゆる「宗教芸術」なるものの典型的な20世紀的意味を感じられるような気がする。20世紀的意味とは、政教分離社会において宗教と芸術がまたあらたな関係をもったのではないか、というようなことである。

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