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2011.07.19

中村拓志先生の設計課題など

中村拓志さんに来ていただいて、一泊二日で設計課題をみていただいた。

2年前だと思ったが、デザインレビューという合同卒計発表会のジュリイでご一緒したのが縁で、きていただいた。

建築とランドスケープを横断して考えさせるようないい課題はありませんかと要望したら、身体をキーワードとしてすえるものであった。

講評は、判定というよりアドバイスであったが、どの学生にたいしても時間をかけてゆっくり対応していただいた。指導する立場のほうがよっぽどたいへんで、どんな学生の案でもかならず良い点があったり、可能性があったりするのであるが、それらがなにであるかをじっくり考えて、どういう喩えがかれらにわかりやすいか考えながらじっくり話さなければならない。

ぼくはこんな説明もしてみた。鹿島茂『パリの異邦人』のなかに、パリの安ホテルに投錨したある作家の絶望。つまり安宿のベッドのクッションは、それまでの何百人何千人の宿泊客の体重により、まんなかがへこんでいる。それらは無数の旅人たちの痕跡であり、鋳型である。そんなものはうっとうしいだけである。なるだけはじっこに身をおこうとする。しかし自然に身体はその窪みにはまりこみ、しかもすっぽりとはまってしまう。それがわかったとき、この作家は、じつは自分はそれら無数の旅人のうちのひとりにすぎなかったことがわかり、その自分の凡庸さありきたりさに気づいたとき、絶望感を味わうという。

それから素材の話し。炭素繊維によるF1や新型航空機のモノコックボディのはなしなど、知らない学生はけっこういた。100年前だとパイプをイスにつかったことなど。

こういう課題はまずコンセプトを理解することが課題の半分なのであるが、そこがむつかしいのであった。しかしそれでも、自信なさげではあったが、可能性のあるプロジェクトは多かった。

打ち上げ。たまたま来ていた研究室のOB3人と合流して、6人で魚料理を食す。地方都市の、まだ商店街がのこっている片隅の、外壁全部をイエローで塗り上げたマンションがあったり、なんかわけありっぽい地区。でもこういう猥雑さはきらいではない。

刺身を味わいながら、これからの建築界などについて話す。大震災を契機として、20世紀はほんとうに終わってしまい、これからが真の21世紀ということで合意。OB3人は、ひとりは広告代理店、ふたりは設計事務所勤務、いろいろ貴重なアドバイスをいただく。

そこがおひらきになると、中村さんは約束があるといって帰って行った。行動力のある人である。ぼくは同僚の先生とOB3人で、隠れ家的飲み屋にゆく。とりとめのない世間話におちこんでゆく。5人でワイン1本をあけたので、解散。

ぼくはそのまま帰宅。お土産にもらった日本酒がおいしそうだったのでつい飲んでしまう。しかしfacebookによると、OBたちはどこかのカラオケでずっとがんばったそうである。元気でなによりである。

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