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2010.11.06

『クラウド時代と〈クール革命〉』と『d/sign, no.18 電子書籍のデザイン』

おやじ読書である。

角川歴彦著『クラウド時代と〈クール革命〉』は出たばかりのころに一読して、たいへん面白かったのだが、すぐ多忙な新学期がはじまったのでブログすることを忘れていた。この本にはいろいろ刺激的なことが書いてある。

とりあえず目前に想定されていのが、音楽、書籍、映像、ゲームがすべてデジタルコンテンツとしてフラットなものとなり、それらをすべて提供する統合ストアがあらわれる。この「クール革命」は2014年におこるらしい(P.129)。そこではアップル、アマゾン、グーグル、マイクロソフトなどが業界の主導権をめぐって情報世界最終戦争を繰り広げるそうな。それに既存の大型書店や、映画配給会社などもくわわるのかな。

それからもうすこし先の未来には、本格的なクラウドコンピューティングが成立する。それからグーグルが構想する世界図書館構想は、アレクサンドリアの古代図書館、バベルの塔の夢をとうとう実現してしまうものだ。人類史上、画期的なものとなるであろう。「所有から利用へ」。図書はクラウド上にあり、ぼくたちはその一部をもくもくと読んでゆく。それは便利でいいのだが、そしたらぼくたちが読書をするその履歴がそっくりAIに残されてしまう。アンダーライン、書き込み、感想、すべてが。そしたらぼくたちが自分の脳だけにあると思っていた、それゆえ個人的秘密とすることができていた、思考の痕跡や、あるいは思考そのものがクラウド上にのる。すると人類はひとつの脳で考えるといった事態になる。そこには新しい宗教が必要とされるであろう。

いっぽう『d/sign, no.18 電子書籍のデザイン』。卓越した職人的技能をもつ日本のデザイナーやIT専門家たちや書籍専門家?たちが、細やかなことを語っている。素人目には業界話のようなものであるが、業界の外から見たほうがこういう話しはほんとうに面白いものだ。おおまかには、紙の時代に培った、編集、校正、装丁、デザイン、は電子書籍の時代にも廃れることはないという。今では、紙本か電子本は、物理的な印刷直前まで同じで、最後のアウトプットが違うだけ。そうすると流通と販売こそが違ってくる。「書籍の産直」である。

余談だが、知らないあいだに映画批評も終わってしまったそうで、「六三年とあるのは六四年の誤り」(p.87)的な批判スタイルが多いのだそうだ。そんな誤りならぼくのブログにもいっぱいあるだろうね。昔のことなんか、記憶だけで書いているし。でも記憶が断片化しぐちゃぐちゃになって摩訶不思議なかたちで再構成されたりしたら(創作とはそんなことであろう)、クラウド的でなくて面白そう。

この社会には文字好きのひとは多いし、活字離れなど数十年まえからいわれ続けているが、ケータイが普及することはそれがウソであることを物語っている。書籍はふえつづける。個人出版はいろいろ難しいし、素人が全部をこなすことは無理だ。そこがわかっている半素人は、たまたま知っている出版関係の人にアドバイスをもとめ、人づてに校正の専門家を探して校正をたのみ、できあいのテンプレートに頼らずに、レイアウトや装丁を最近美大を出たけれど仕事がない才能ある若い人に頼んだりするであろう。契約としては(わずかな)収益の配分を決めておくくらいであろう。そういう共同作業のほうが、ひとり家でこもって仕事するより楽しかろうね。

個人クライアントをターゲットにしたアトリエなどあらわれるのかな。個人クライアント目当ての電子書籍アトリエが、やがて超有名アトリエに成長するなんて、住宅からはじめて公共建築を手がけるようになる日本の建築家成長物語りと同じだし。

地球規模の黙示録的なことにもなるし、アーツアンドクラフツ的な適切スケールの話しにもなるようである。すると日本語などという地域言語の世界をしっかり残すのも、たいへんよいことである。いっそのこと、絶滅しかけている言語を遺産としてうけとり、特定メンバーだけの共通言語にしてしまう?

そんなことを考えながらiPadにいろいろ仕込む。便利なんだけどPC同期に時間がかかりすぎ。どなたかいい方法を教えてください。

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