« 『踊る小人』 | トップページ | 岡嶋裕史『ポスト・モバイル』 »

2010.07.20

藻谷浩介『デフレの正体』

一種のサラリーマン読書である。こういうものも好きである。3時まで17世紀のフランス語を翻訳していた。そのあとに読むとよいのは小説とかこんな実用書である。

「人口の波」すなわち現役世代人口の絶対数を指標にして経済現象を説明している。すなわち15歳から65歳までが活発に生産し消費する層なのであって、経済の実体はそこにあるということが説明されている。だから失業率とか、GDPとか、メディアによく登場する指標はほとんど役にたたないという指摘である。

なるほど。専門家ではないので批判的には読めないが、いちおう納得する。

日本においてこの現役世代人口は、戦後から1995年lころまで増加し続けたが、そこでピークをむかえ、それ以降は減少しつづける。日本の人口動態はみんな知っているから驚く話ではない。でも、バブル崩壊後も消費は伸び続けとか、21世紀初頭の経済成長にもかかわらず豊かさを感じられなかったのはそのせいとか。若者の車離れは一面の減少であって、構造的には購買者層の絶対人口数の減少があるということ、など。

しかし1995年が画期となるというのが歴史家的にはおもしろい。長期的変動のはなしはおもしろいものである。日本の経済は、1995年前後におおきく変化したのだが、それはいわゆる構造的なものというより、もっと即物的であられもないものであった。この年はサリン事件と大地震の年でもあったが、もちろん人口動態との因果関係はない。象徴的符号というものであろう。なにしろこれほど大規模な人口減少は有史以来のことであるが、地震やテロは周期的なものであるからだ。

読んでいて、60年代の高度経済成長は輸出ではなく内需拡大がエンジンであったというような説明を思い出した。この著者もまた内需縮小が最大問題であるという。それとともに生産性向上はそれとはまったく切り離された別の問題、という指摘もおもしろかった。

最後に、日本の住宅政策を賞賛しているところもおもしろかった。公共セクターと民間セクターがうまくすみ分けているというのがよいらしく、医療もそうすべきという主張である。医療のことをいう資格はぼくにはないが、住宅はそうかなあ。住宅はかつてほど内需拡大には貢献できない。なにしろ絶対数は余っているからである。でもお金持ちの高齢者のための高付加価値住宅なんかいいかなあ。たとえば坪500万でどこまで付加できるかなんてやってみるといいかも。それこそハード+ソフトの超高密度サービス空間であろうね。iPad+フェラーリがそのまま住宅になったようなもの?ぼくは住めませんが。

19世紀と20世紀はひたすら住宅不足であった。需要を満たすために、供給側は必死でがんばった。合理化したし、民業から公共へと180度シフトもした。それが供給過多となりデフレ現象を生む。こういう構図は自動車産業と同じである。ル・コルビュジエの夢はかなったのだ。住宅は自動車のようなものだ。ただし悪夢としてかなったのかもしれない。

住宅の場合は、スペック基準を操作し上方修正し、数には解消されないような都市性、都市ブランドなどを付加することでしょうね。

|

« 『踊る小人』 | トップページ | 岡嶋裕史『ポスト・モバイル』 »

コメント

1995年頃は、第二次ベビーブーム世代の中心層が四年制大学を卒業して、就職し始めていた時期ですね。彼らが新生活のために色々なモノを買っていた時期です。スーツやらベッドやら家具やら、その他日用品もろもろ。ちょっと値の張る財布や名刺入れなんかも買ってたかなぁ。
この世代は地方から大都市へ出て来た人達も多く(東京への憧れが強い世代)、都会暮らしに必要なものを一式揃える人が多かったですね。だから、たくさんモノが売れていたのかも知れません。
下のグラフを見ると分かり易いです。

千葉市の年齢別人口グラフ(1989年~2010年)
http://homepage3.nifty.com/joharinokagami/121002.html

投稿: ponpon | 2010.07.20 11:16

『デフレの正体』は、経済学的に見ると、間違いだらけの本です。

ブログ『高校生からのマクロ・ミクロ経済学入門』http://abc60w.blog16.fc2.com/カテゴリ:藻谷浩介『デフレの正体』日本政策投資銀行を参照下さい。

その上で、おかしなところがあれば、ご指摘下さい。

よろしくお願いいたします。

投稿: 菅原晃 | 2010.08.07 22:37

ブログ『高校生からのマクロ・ミクロ経済学入門』http://abc60w.blog16.fc2.com/

も、なんだか不思議な感じです。

専門家でなくとも、常識を大事にしながら読む、という姿勢が大事ですよ。

投稿: 立川よいとこ一度はおいで | 2011.02.25 01:00

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/424713/35815814

この記事へのトラックバック一覧です: 藻谷浩介『デフレの正体』:

« 『踊る小人』 | トップページ | 岡嶋裕史『ポスト・モバイル』 »