« 太田博太郎『日本建築史序説』 | トップページ | 『村野藤吾研究』 »

2010.06.08

「グラン・パリ」法が公布された

例によってWEB版ル・モニトゥール誌からである。現地時間で2010年6月7日17時18分発表。

この法律はとりわけ首都をループ状にとりまく130kmにおよぶ自動運転のメトロを計画したもの。6月5日付の官報において講評された。

5月27日に上院・下院で最終的に採択され、6月3日に大統領により公布された。

法律の目的は、旅客のための公共交通網を建設することで、パリとイル=ド=フランス地域圏の求心力のある地域をむすび、国と自治体が共同で策定し定義し実現するストラテジックな地域と計画によって経済的都市的な発展に骨格を与えるのである(同法第三条)。なのでループ状メトロ網は、9カ所の「プロジェクト領域(teritoire de projetをこう訳してみた)」すなわちプレーヌ=コミューン、ロワシ、オルリ、サクレ、デファンス、シャン=シュール=マルヌ、エブリ、セーヌ=オワーズ、モンフェルメイユ=クリシ=ス=ボワ、を連絡する。

この輸送網は、「領域開発契約」(contrats de développement territorialをこう訳したがもちろん専門家は違う訳語をあてるであろう)ごとになされる。これらの契約は毎年7万戸の住居を建設するという目標を達成する一助となる。これら住居は人口的にも社会的にもイル=ド=フランスに適合したものであり、都市の拡張を制御することに貢献するものである(同法4条と5条)。政府によれば、それを創造することで、「15年で100万の雇用を」創出することができる。

「グラン・パリ公社 Société du Grand Paris」

グラン・パリの新しい交通網は、イル=ド=フランスにすでにある交通網としっかり連絡している。鉄道、河川、国道かならるネットワークのなかに溶け込み、領土における不均衡を抑制する。大陸上にあるフランスの地域圏相互の連絡をより迅速にそして容易にし、イル=ド=フランス地域圏での乗り換えによる混乱を回避することに貢献する。

このため法文では「グラン・パリ公社」という公共機関を創設する(2条)。その任務は、グラン・パリ交通網に関連した整備・建設事業を実現することである。また同時に、競争力拠点とサクレ平原科学テクノロジー拠点によって研究、イノヴェーション、産業再活用などを促進するであろう(6条)

・・・・といったことのようである。基本的には、あまりに強固であった放射状構造・中心/周辺図式を緩和して、ネットワーク型にしようというものである。パリは、基本的には19世紀の古きよきパリの(そのままではないにしても)継承であり、21世紀のパリ首都圏は自律的部分からなるゆるやかなネットワークということか。とはいえ1919年発足のパリ拡大委員会や、アンリ・プロストの大都市圏構想との連続性・発展性において語られるものでもあろう。「都市計画」という学問そのものが20世紀初頭の人工的構築物なのだが、現実と学問が平行して競争し合った、1世紀にわたる併走関係のひとつの結論のようなものであろう。もちろん変化し続けるなかでの暫定的なものではあるのであろうが。

法律そのものもダウンロードできる。

|

« 太田博太郎『日本建築史序説』 | トップページ | 『村野藤吾研究』 »

Paris」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「グラン・パリ」法が公布された:

« 太田博太郎『日本建築史序説』 | トップページ | 『村野藤吾研究』 »