SANAAがラ・サマリテーヌ改修をてがけるという
プリツカー賞を受賞した妹島さんと西沢さんは、パリの百貨店ラ・サマリテーヌの改修もするらしい。
これはパリ市が2009年7月に改訂して発表したPLU(地域都市プラン)の枠組みのなかでなされるものである。商業施設の改装ではなく、都市計画のなかに位置づけられたパブリックなプロジェクトなのである。
さて百貨店の名「ラ・サマリテーヌ」の由来はなにか。イエス・キリストに水を与えたサマリア女のことである。ではなぜ水か。百貨店が建設されるより昔、17世紀より、そこにポン=ヌフ橋がある。この橋に付属して、水を吸い上げるポンプ施設があっった。ポンプはセーヌ川の水をすいあげ、パリ市民に飲み水など生活用水を提供していた。この揚水施設が、そのサマリア女にちなんでラ・サマリテーヌと呼ばれていたのであった。だからといってパリ市民はキリスト様なのか、などと野暮なことはきかない。そしてこの百貨店は、そのポンプの名を譲り受けたのであった。だから「サマリア女」→「ポンプ」→「百貨店」、なのである。ああややこしい。
この百貨店は、1990年代のパサージュ、百貨店ブームのなかで内装を建設当初のものにもどしていたが、それからグローバル化のなかで営業が悪化し、閉店を余儀なくされた。閉店するときは従業員たちが抗議の集会を開いたが、無駄であった。結局2005年、最終的に閉鎖された。
報道によると、パリ市は「社会的ならびにきわめて社会的な住居logements sociaux et très sociaux」(ということは低廉そしてとても低廉な住居)に7000㎡、保育園(60人収容)を予定している。さらに2200人の雇用、725人の俸給受給者、という。店舗やオフィスなどもあるのであろう。
SANAAはランス市のルーブル博物館もやっている。さらにパリ16区avenue du Maréchal Fayolleでは140戸の社会的住宅のプロジェクトも2007年からやっているという。
それはそうとして、この百貨店の地下はかつてホームセンターのような店舗であった。留学していたころ、メラミン合板を裁断してもらって、下宿に本棚をつくったなあ。10年ほどまえも、自宅の浴室の壁タイルをやりかえようとおもって、出張ついでに、タイルのサンプルを買ったなあ。そこで一式買い付けようかとも思ったが、そこまではいかなかった。日本の日常世界は極端に工業化されていて、フランスはよっぽど手のぬくもりが残されていると思ったものであった。
セーヌ川を見下ろすところに社会的住宅か。つまりパリ市が財政補助をして収入の少ない人びとを一等地に住まわせるということである。勝ち組だけが、商業とオフィスだけが、都心に居残るのではないということである。都市計画としてはじつは古典的なのであるが、今日の状況下では、さわやかにも感じられる。
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