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2010.03.28

小林重敬『都市計画はどう変わるか』

小林先生から賜った。ありがとうございます。

Y-GSAでごいっしょして、ぼくはあいかわらず言いたい放題なのであったが、小林先生からはいろいろアドバイスをいただいたのであった。

グローバル/ローカル、マーケット/コミュニティ、まちづくり三法など制度・政策の専門家から教えていただくのはたいへん参考になる。

それ以上に興味深かったのは、彼の論考もしっかりした歴史観にもとづいているという点であった。19世紀末のドイツ都市法などを原型として20世紀のそれが形成された。20世紀の近代都市計画は、新中間階層をターゲットにしているのであり、それがあるので各国でバリエーションがあるとはいえ、共通の戦略というものを比較することができる。

反面、グローバル化などが作用して都市計画がまったく違うフェーズに突入していることはあきらななのに、次世代の都市計画を支える階層の姿がはっきりみえてこないことが問題であるという。

都市計画についての歴史観とはどんなものか?それはいわゆる都市史とどう違うか?などを考察することはよいことである。

ヨーロッパではルネサンス以降、都市はひとつの法人格なのであるから、王(宮廷)や国家と、都市は、上下の関係とはいえことなる法人格として交渉し、対話をしていた。だから王の命令による、都市のプロジェクトは、きわめて特徴的であり輪郭のはっきりしたものとして、異彩をはなつものとなった。

19世紀、オスマンのパリ大改造などは、いわば国が指導してブルジョワの都市空間投機をあおったようなものであった。このとき行政は土地収用を恣意的にすることができた。しかも近代的な都市計画法などなかった。都市計画法はない状態で、都市開発行為がなされた。それはブルジョワ都市の形成であった。このとき産業化、都市化の勢いで、「労働者」階級が、そして労働者街区が生産された。つまりブルジョワが突出することで反射的に労働者階級が生産されたのであった。階級闘争はまさに都市スペース内闘争としてきわめてリアルに発生する。それが2月革命でありパリ=コミューンであった。

20世紀はこの階級闘争を調停しようとして、普遍的市民というあらたなイメージを確立しようとする。象徴的なことが「労働者住宅」という概念そのものである。ヨーロッパ内でも国によって異なるようであるが、すくなくともフランスでは、労働者住宅という概念そのものをなくし、それにかわって低廉住宅、適正価格住宅という概念がうまれる。CIAMはそれを最小限住宅と読み替える。そして20世紀末にはアフォーダブルなどという言葉まで生まれる。

CIAMの最小限住宅とは面積最小限ということだけではないと思われる。バストイレ、台所などの住宅設備がすくなくとも備わっているというような意味である。20世紀初頭のその時代、8時間労働、社会保障、選挙権、バカンス法など、いわゆる普遍的市民の社会的存在を規定する法制度が整備されたことを忘れてはならない。法制度によって社会的に規定された普遍的市民、それにあてがわれたのが最小限住宅なのであった。それはブルジョワ/労働者という切断をないことにし、労働者住宅というカテゴリーをなくすことに戦略的な意義があったのであった。

日本国内でも同様な経緯がある。たとえば1930年代における建築学会の検討のなかで、「長屋」といった前近代的な類型用語はあっさり抹殺されたのであった。戦後も浜口ミホが住宅の封建制を批判するのであるが、それはむしろ、普遍的住宅という20世紀イデオロギーを強化することとなった。

このことに象徴されるように、20世紀都市計画は抽象的市民を念頭においたし、山本理顕さん流にいえばまさにそのような抽象的市民を生産したのであった。

21世紀の都市計画はどんな階層を念頭におくか?・・・などぼくにわかるわけがない。ただ住宅を指標にして、さらに20世紀の大テーマ、サニタリーや情報のパーソナル化などを考えると、これらが19世紀にまで逆行するなどとは考えられない。すると考えられるのは、住宅が指標であった20世紀にたいして、同様な住宅が供給されつつも別の指標によってドライブされる21世紀ということなのかな?まあ現実の推移から学ばさせていただきましょう。(というわけでこれからサカナ焼きます)

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