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2009.11.14

クリエイティブ都市

木曜日と金曜日は、人と会って話し合う機会がおおかった。

ひとつはクリエイティブ都市に関する集まり。パワポによる力作プレゼンを拝見した。

とくに新しいコンセプトではないが、状況を知るためには役に立つ。日本ではやはり横浜市、金沢市などが模範都市であり、その他の都市とはかなり差がある。日本国内の状況はというと、東京はそんな企画をしなくともクリエイティブな力を独占している都市であり、京都は伝統と文化のストックにおいて圧倒的でありわざわざ文化振興ではなくて抵抗勢力を抑止することが大事な場である。政策的に課題となるのが、2番手3番手となる中堅都市であり、横浜や金沢は周知のとおり健闘している。また韓国の釜山やなんかの先進事例もプレゼンでは紹介されていた。

クリエイティブ都市、90年代だとデザイン都市などという標語。横浜市は70年代より独自の政策展開があり、海外の事例研究もおこたらず、それが20年30年つづくと、他の都市からみれば、まさに海外の先進都市ときわめて密接に歩調をあわせてきた例外的都市であるようにも思える。

産業の構造転換やEU成立などにともない、ヨーロッパの地域や都市は自律的な政策転換をおこない、それがクリエイティブ都市の背景となっている。ナント市、ビルバオ市などはその有名な例だが、共通しているのは製造業から文化都市への転換という構図である。日本だと、伝統工芸のある金沢市が該当しそうだ。近代的な製造業と伝統工芸はすこし違うのかもしれない。しかし伝統工芸も近代化において近代産業化しようと試みた。

つまり近代産業都市は、工場のペルトコンベア的生産形態から連想するとあまり文化的ではないような印象をうけるが、しかしものをつくるということは機械的につくるのではなく、創意工夫がすくなからず要求される。地域力としてそんな経験が見えない歴史的資産となって、文化都市形成に活かされるのではないか?

これも印象にすぎないが、伝統的都市であっても商業を中核とした都市はどうも文化政策がうまくいかないようなのである。

製造業は、設備投資がもっといるし、長期的な視野も必要だ。しかし商業は、小売り業ほど、短期的視野でもいい。もうかる商売は、たとえば1~2年で儲けて、流行がおわればたためばいい。極端にいえば、そういう対比もある。

そんなことをかんがえていけば、日本の都市もそれぞれ顕著な個性をもっている。クリエイティブ都市はこうした個性を理解することから始まるのであろう。

・・・なんてことを考えた。クリエイティブ都市のプレゼンを見ながらであった。

そのあと地元ケーブルテレビ局の人と会った。F市現代建築を紹介する番組を制作するためである。取材対象となる作品を選び、内部撮影はどれにするか、おおまかなテーマなどについて話し合う。

F市は、磯崎・黒川の70年代から、80年代には地元ディベロッパーがかなり積極的で、いわゆる「外タレ」(外国人有名建築家)を読んできていろいろ建てさせた。だからけっこう見物は多い。批判ももちろん多かったが、結局現在となっては「ポストモダン都市」の雰囲気を漂わせている。時代を遡ってその時点でペストの判断であったかどうかは別だが、これはこれで文化財であると思う。歴史家はいいも悪いも含めて、歴史を構成するあらゆる建築にそれなりに意味と意義を与えねばならないのであって、木造町屋だけが歴史的建築であって、他のとくに現代建築はそうでないなどと考えている建築史家を、ぼくは信用しない。

それはともかく、MATなんとかという企画にすこしまえに参加した。ロンドン、パリ、シカゴの先例に学んだ市内建築鑑賞ツアーであるが、継続的にやることの意義は大きい。

MATの打ち上げはのぞいたが、運営側学生たちの盛り上がりが印象的であった。あのパワーが地域を支えるであろう。1回で終わらせず、継続してほしいものである。

建築紹介TV番組は、地元だけでなく、韓国でも放送されるそうである。隣国の人びとが、日本の都市や建築に関心をもっていただければ、高速フェリーですぐきて、観光してくれるかもしれない。ぼくらが韓国の事例をみてほほうと思うということが、鏡像関係でむこうにおこればいいということである。

・・・・金曜日の夜は、研究室の現役+OBがぼくんちに集まってパーティ。OBは設計事務所勤務と広告代理店勤務であるが、2年目にしてはよく社会勉強している。地方都市はいま経済氷河期である。そのなかで仕事があるだけでもOKである。

彼らもまたこの地元の文化的民度は最悪!などと憤慨していた。まあそのとおりなのであるが。近代社会においては、文化は政策的に構築されるものなので、やはり芸術的やデザイン系の大学がいつから、どの規模で、地域のなかに存在しているかは決定的である。東京や関西なら明治のころから芸術の学部があって、それが社会のなかに文化を構築する柱となっていた。しかしほとんどの地方では、戦後やっと芸術系・デザイン系ができたか、今でもない、かどちらかである。そこには想像以上の格差がある。東京芸大で吉村展をみたが、あの観客の多さと熱気は、やはり歴史的にできた芸大パワーであって、上野でしか成立しない、地方からはまったく別格であることは、ご当人たちも知らないものである。

とはいえぼくのマンションにきていた他研究室の学生も含め、若い世代における文化・建築・デザインについてのリテラシーは10年単位でみればどんどん向上してきている。地方都市の文化的成熟を50年後に想定しても、イヤミでもなんでもなく、いいのではないか。大学、研究所、文化施設といった文化インフラが、時代をこえて生きた(生き残った)ころに、成果はでるのだと思われる。

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コメント

金曜日は大勢で押しかけてしまい、ご迷惑ではなかったかと心配しております。遅くまでお付き合い頂いて、有難うございました。

私個人としては、久しぶりに大学の雰囲気を味わえて、きもちがきれいになりました。とはいえ、疲弊した姿を後輩たちに見せてしまったような・・・反省します。

卒業しても、研究室で培った、文化的なものに価値を置くこころを大事にしてほしいですね。職種にもよるとは思いますが、社会に出れば利益ベースで何でも考えていかなければならない局面に遭うので・・・。むしろ、一緒にそういった気運を盛り上げていけたらと思っております。

よろしければ、また集まって飲む場をつくらせて下さい。

土居研OG

投稿: uk | 2009.11.17 12:03

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