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2009.09.01

塩野七生『ローマ人の物語 最後の努力』と政権交代

久しぶりの海外出張である。

空港の書店で標記文庫本を買って、機中の暇つぶしに、読む。上中下巻を読み切る。つくづく飛行機のなかで読むにふさわしい書籍であると感じる。

ディオクレティアヌス帝とコンスタンティヌス帝の、クリティカルな時代である。西洋建築史の講義では、コンスタンティヌス帝のミラノ勅令でキリスト教が公認され、初期キリスト教の教会堂が建設されたと毎年説明しているので、彼女がどう説明しているか興味深かった。この作品は歴史小説であり、一種の国盗り物語りとして書かれている。だから先帝がキリスト教を弾圧したり、こんどは一転して公認したりということが、権力抗争との関連で描かれている。

ようするに四頭政治などの権力の分散から、皇帝への権力集中という新しいシステムにとって、多神教的な古代ローマ宗教よりも、一神教的なキリスト教が構造的にぴったりフィットするし、皇帝の権力の正統性として、共和国的な選挙よりも、権力神授的な理由付けがよいのだ、というような説明であった。

わかりやすい。でもそれは、ビザンチン帝国的な枠組みと、西ヨーロッパの中世における分権的構造の両方をいちどに説明できるのであろうか?西ヨーロッパはもっと異システム併存的であり、あまりすっぱりした説明はできないような気がする。いずれにせよ古代史・中世史の専門家にきくべき問題である。

ローマ帝国の政権交代のつぎは現代日本の政権交代であった。

パリに着くと、選挙の結果がでていた。ヘラルドトリビューン紙では、もっぱらアメリカとの関係を問題にしていた。民主党の政権構想は反アメリカ的だが、それは旧左翼勢力をなだめるためという見解が示されていた。そのうち親米的な本性があらわれるであろう、という観測である。

フランスのル・フィガロ紙では、経済、失業、官僚支配の打倒、天下り問題などの生活者的なまっとうな視点から紹介されていた。外交については言及はなかった。

当たり前だが、日本のマスコミも欲目から論じる。日本のメディアは、ワシントンポスト紙などを引用して、オバマ政権は日本の新政権を相手にしないのではないか、という悲観論を展開していた。どうもこのあたりが恣意的に選択されている。

コンスタンティヌス帝は、中央集権的な、管理主義的国家として帝国を再建し、滅亡をしばらく先送りするのであるが、まさにその新体制の性格によって結局はローマ帝国は滅亡するというのが塩野七生のあらすじのようである。日本はどうなるのであろう。

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