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2009.07.11

アーバン・フィジックス

今年の日本建築学会のいわゆる学会コンペのテーマは、アーバン・フィジックスである。

13時半、会場につく。旧知のMさん、Sさん、Oさん、支部の方などに挨拶。わきあいあいでさっそくコンペ案を見る。

アーバン・フィジックスというお題を自分なりに咀嚼して見る。まずは建築と都市をシームレスに「一つの指標」で横断的に考えてみる、ということ。「音、空気、熱、・・・」といったとても即物的なものを指標としてみる、という学会からのお達しである。これはコンピュータによって複雑なシミュレーションができるようになったので可能になった方法である。

都市や地域を考えるさい、これまでは、社会、コミュニティ、景気、雇用、家族、近隣といったかなりウエットなものを手がかりとしていた。建築関係者はこのようなウエットなものに、じつは辟易していたのではないか。だからこのような単純で、ある意味で古典的な、指標に還元して考えることが、一服の清涼剤になったのであった。

学生のプロジェクトにはそんな開放感はあったか?そこそこである。

多かったのは、これまでのような地球にやさしい系。屋上緑化、風の道、生態系、洪水の復権、親水空間、といったもの。でもこれはエコ系建築ということで、今回のお題にはしっくりこない、というのがぼくの解釈。

おそらく首都圏ではかなりアグレッシブな案がでるであろう。地方では地域的特性をいかした案が出る。たとえばイグサを都市のあちこちに繁殖させる案など。イグサの産地であるというような正当化ができる。もっともぼくはあまりに関心がなかったせいかモグサといってボケてみる。

可能性がありそうなプロジェクト。たとえばある地域のなかのフィットネス施設で消費される総カロリーを指標とする案。電気自動車が普遍化してマイカーがすべて家電化してインテリア化したときにそれが町並み(外部のパーキングがなくなる)や施設(ショッピングセンターのなかにまで自動車で入り込める)がどう変わってゆくかのシミュレーション。などなど。

つまり「パラメーター」を変えてみることで、都市がどう違ってみえるか、ということに気がついた案を、ぼくは選んだ。学生はえてしてウエット派であり、こんなドライになれる人は少ないからだ。でもいちどはドライを経験することは建築にはとても大切なことだ。

「パラメーター」を変えてみる。既存の例としてはなにがあるか?たとえばオランダの建築家が提案していたピッグタワー。たとえば19世紀パリでコレラが流行したときの、地区ごとの死亡率の分布(安全な地区、危険な地区が露骨に区別される)などが思い出される。とくに後者は、コレラ死亡率の濃淡は、社会階層、職種、貧富度を反映したものでもあって、このような意味で都市における疫病は社会をそのまま投影するのである。ちょうど地震といった自然災害も、じつは不平等で、社会的弱者をいじめるものであるように。

そんなわけでぼくはひとときの清涼感を味わうことを期待していた。満足感はそこそこであった。

帰り。Mさん、Sさんと地下鉄で途中まで一緒した。一級建築士の集まりでもオヤジだらけでなんじゃこりゃという不平を聞く。Mさんは、ここでこれからフィットネス、といって降りてゆく。けっきょくぼくも、一度帰宅してからフィットネスで汗をながす。まあ土曜日勤務ですからね。

ひとときの清涼感である。

アーバン・フィジックスならぬアーバン・フィジカル。

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