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2008.12.02

不法占拠や《ライモンダ》など

日曜日なのに原稿書き。といってもありがたい話なのだが。京都のN先生からお誘いをうけたので、12月に京都で開催される日仏シンポに発表することとなった。その発表原稿である。

手元にまったく資料なしで学術的なことを書く。とはいっても文献名、刊行年などはフランス国立図書館のWEBカタログで確認できるし、ウィキペディア(もちろん英語版・フランス語版)も記憶違いを修正するためになど、いろいろ便利。いい時代になったものです。そんなこんなで1日まるまる使って、8000字を書き上げ、メール添付で送る。内容はまた後日書きます。

月曜日は、大学や研究室とメールでやりとりして事務作業を進める。なんだこれでは研究室にいるのと同じではないか。WEBは非場所化を推進してしまう。でも大学の業務なのだから、なにがなんでもしなければならない。あとデジカメ接写した資料をすこし解読しはじめる。

15時から、パリの建築大学の学生であるA嬢とB君とあって、研究指導。彼らは交換留学生として来日し、Q大のぼくの研究室で1年過ごしていた。うん、ひさしぶり。彼らは卒業研究に相当するものとして、日本の現代建築についてスタディしている。詳細は彼らのために書けないが、昔と比べて日仏の距離はとても小さくなっている。

いろいろ雑談。ぼくが調査している対象建築についてフランス人がいだく一般的イメージ。日本については、コンビニ、ホームレス、狭小住宅、不法占拠、68年、戦後の引き上げ、メタボリズム、川添登、菊竹清訓、沖縄博のパヴィリオン、70大阪万博、黒川紀章、中銀カプセルタワー、東孝光の塔の家、道路拡幅、宅地区画、などなど。いろいろ話しているうちに、こちらも整理できてくる。公共空間/私的空間の閾は、伝統的に、西洋/日本では異なっている。欧米視察団の時代から、日本人は気がついていた。市役所前広場も、日本は官僚がしっかり管理しており、西洋と広場とは違う。以上は通説。しかしこの空間における公/私はいろんな形で再登場しているのではないか。戦争直後のさまざまな不法占拠、大学紛争における解放区=アジール、ホームレス、コンビニや路上空間におけるカスタマイズ化、など。

あっというまに3時間たつ。ふう。またね、いつでも連絡して、といい残して、とりあえず一度アパルトマンに戻る。

着替えて、19時半からオペラ座で《ライモンダ》である。

なぜぼくがパレエを観劇するかはいろいろ事情があるので割愛するが、ともかくおもしろかった。これは3部構成で、3時間以上かかり、3幕すべて見た人間はファンでも限られているそうだ。しかもバレエをろくに知りもしないのに全部見た、きわめて希な日本人のひとりに、ぼくはなった。

《ライモンダ》はハンガリーが舞台。ライモンダとその婚約者ジャン。ジャンは十字軍に出征する。彼女は、サラセンの王子アブデラフマンから求愛される。帰還したジャンはアブデラムと決闘し、勝つ。国王アンドレ二世臨席で、ジャンとライモンダの結婚式。というようなお話しである。

つまり19世紀末の状況がよく反映されていると思われる。もともとハンガリーは、部分的にオスマントルコの支配をうけていたなど、ヨーロッパと東方の狭間にある。19世紀はオーストリア=ハンガリー帝国であった。なにせ「十字軍」です。これはオスマントルコ的なものの否定のポーズです。

というようなオペラ=民族自立文化説を思い出すのである。そんな背景を考えるとちょっと生々しい。

それはそれとして、ともかくも豪華キャストであった。ニコラ・ル・リシュはアブデラム役で登場するが、この敵役をデンジャラスに美しく演じていた。

とりわけアンリエット役のドロテ・ジルベール(Dorothée Gilbert)はすごかった。なんでも最近めきめき力をつけてきたらしい。ともかくライモンダ役のマリ=アニェス・ジロを完全に喰ってしまう技量と人気と拍手喝采なのであった。素人目にもはっきりわかるのは、首・肩・腕・指先がひとつのものとして連動するさまが、まったく次元が違う。彼女の身体がほんとうの身体だとしたら、ほかのダンサーは不完全でぎこちないCG動画に思えてしまうほど、なめらかだ。そして魅惑的だ。挑発するように。難しいステップがどうのこうのは、ぼくには論じられない。しかし彼女はたんに足で踏ん張っているのではない。足先で、床をマッサージしているかの、床をさまざまな力のいれぐあいでそっとタッチしているかのようなのだ。・・・ほんとうにいいものを見せていただきました。極楽。

舞台セットもよかった。広い広い大きな布を、巨大な天蓋のように、いっきに展開してみせるなど、なかなか効果的。こういう建築的装置、というか建築的に解釈したくなるような装は好きである。

というようなことで、アパルトマンでビールをいただくころには深夜。すぐに爆睡しました。

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