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2008.12.01

「パリの未来派」展

ポンピドゥ・センターで「パリの未来派」展をやっていたので、のぞいてきました。アート全般については専門外なので、印象しか書きませんが。

まずかなり的を絞った展覧会であったこと。絵画のみ。それから時期的にもほとんど1910年代が中心。でもそれだけ、細やかで、わかりやすかった。

背景。未来派が最初のマニフェストを発表したのがパリの新聞であったので、日本から見ると、ヨーロッパ全体が背景であったかに思えてしまう。でもそうではない。パリからみると、これはあくまでイタリアの運動である。

未来派の人びとはマニフェストを発表し、そしてパリに乗り込んでキュビスムとの抗争を展開する。最初は、未来派にとって、キュビスムは前衛芸術のようなふりして、いまだにアカデミズムにとらわれているにすぎなかった。そしてそのように批判した。しかし交流がすすむと、お互いに理解し合い、理念を交換するようになった。などなどである。

さらにロシアの未来派は「キュボフュチュリスム Cubofuturisme」と呼ばれる。しかしロシア人たちはある意味でイタリア人より先行しより急進的であった側面もある。ともあれそれは具体的な人的交流にもとづいている。

さらにアポリネールが「オルフィスム」とようだものも、未来派が触媒となってキュビズムから派生したものであった。

というようなことが、どのような人的交流で促進され、いかなる絵画作品となって結実したかが、10のコーナーで分節化して説明されており、とてもわかりやすい。

ただイデオロギーの紹介としてはありきたりだと思った。運動、機械、騒音、ある種のマチョイズム、云々。展覧会の出口脇にはマニフェストの一部が大きな文字で掲示され、それによると、すべてのアカデミズム(ヒューマニズム)をうち捨てて、ゴミと断片から創造するのである・・・といった主張は、たしかに20世紀後半の先取りではあるし、未来派が20世紀全体を支配していたとしても、ぼくはかまわない、のだが。

あとは素人なので暴論を箇条書きします。

パリでの展覧会なので、日本にいるときとは別の視野で未来派を眺められる。つまり日本からみると、どうしても未来派もキュビスムも構成主義も、おなじヨーロッパを土壌にして生まれてきたおなじモダニズムのさまざまな派生でしょう、などと考えやすく、いろいろなものを十把一絡げに「モダニズム建築」などとする発想はここから生まれる。しかしパリにいれば、未来派とキュビズムは、名前が違えば中身も違う。そしてパリにとって、未来派は向こうから乗り込んできた、トリックスターである。このような諸運動の空間がわかるというのが、現場ならではです。

うまい/へた、は隠しようもない。ピカソやブラックの絵も参照として展示されていたが、やはりオーラがちがう。思想の革新性、試みの斬新さはそのようなものとして評価されるでしょう。しかし作品の完成度、アーティストの力量もまた、それとは別の基準で判断されます。おなじ会場で一度にみてしまうと、その差は残酷なまでに明らかなようにも思えます。

未来派は抽象度が足りない。つまりすべてが具象であり、人体、風景、を非アカデミックな方法で描こうとはしているが、その成功度はまちまちです。だから全体を見ていると、やはりイタリアを中心とする西ヨーロッパの人文主義的伝統のなかで、人文主義から結局のところ逃れられないような宿命のなかで、しかし、そこから別のものを創造しようとしている悪戦苦闘がむしろ印象的です。そうか、これだけ苦労するのだから、東洋、アフリカ、など別世界に活路を見いだそうとするのも自然です。

戦後のジャクソン・ポラックなどは、過去を引きずっていないので、圧倒的に抽象度が高い。この展覧会をみると、戦後のアメリカのことなど考えてしまう。

アカデミズムへの態度。未来派は、キュビズムは隠れアカデミズムだといって批判しました。でもそういう未来派も、まさにそう批判することで、隠れアカデミズムであるかのように思える。むしろアカデミズムは、きちんと批判される対象であることで、その役割を果たし、アートの中心軸であったのだなとも感じました。

展覧会のキュレーターが指摘するように、未来派は、反アカデミズムであり、ゴミと断片からすべてを構築するアートであったとしたら?でも的を絞った展覧会であり、絵画以外のその他の分野は今回は対象外なのだから、そこまで大風呂敷でなくとも、という感じはしますけど。

謝暴論暴言。

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