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2008.11.08

オバマ次期大統領への業界的視線

ここ二~三日体調が悪い、ふらふらする、集中できないぞ、と思っていたら、コーヒー飲み過ぎ、カフェイン過剰摂取であった。それなりに忙しかったのです。だからウェブも更新できなかった。でも今日は土曜日。カフェイン抜きして身体浄化しよおっと。ついでにWEB朝刊をぱらぱら(かちゃかちゃ、か)。おお空も明るくなってきたぞ。

朝日(11月8日付記事)、NYタイムズ(11月7日付記事)、ル・モンド(11月7日付記事)各紙も、次期大統領が経済対策に最優先で取り組み決意であることをのべた、と報じている。まだまだどうなるか不安な状況だから、大統領になる人にいちばんいってほしかった言葉であろう。

しかし業界は、同じようなことであっても、別の言葉で意思表明をする。AR誌、Bond Buyer誌、ENR.com、McGraw-Hill ConstructionのHPなど、11月4日の投票の結果を分析している。国内経済、赤字予算という問題はこれからの公共プロジェクトにとって脅威ではある。しかしカルフォルニア州では、州を縦断する高速鉄道の建設、LA市の学校群、SF市病院などについて投票者はOKの反応を示したし、ワシントン州ではシアトル市の新交通システムについてOKという反応が読み取れる。全体としては、産業界が新大統領に望んでいることは、この経済危機にもかかわらず、公共投資をして、経済を刺激してほしいといったことである。

ところでウェブ版AR誌の最新記事では、有名なソフト会社であるベントレ・システムズ社(Bentley Systems)が、インフラ・デザインのための新しいソフトをリリースするという。コード名は「アテネ」。ビルディング、道路、マニュファクチャリング設備など大規模プロジェクトはすでにソフトウエアなしには設計できない。ボーイング777がワーキング・トゥギャザ、つまりソフトと通信によって世界中のエンジニアにより共同制作されたことを思い出させます。こういうシステムは、基本はおなじ原理であって、最終プロダクトが建築なのか飛行機なのか、という違いにすぎないようです。

でもこれはたんに建築、道路、橋などを建設するシステムではない。それが協同作業としてできる、その協働性を促進するものらしい。だからデータの互換性といったことが生命線になる。そんなわけでベントレ社とオートデスク社は協定を結んで、データ交換ができるようにするらしい。

注目すべきは、こんなことも大統領選と絡んでいるという。つまり公共事業としての、公・民事業としてのインフラ整備がこれからどんどんプロジェクト化されるであろう、と予想しているからです。オバマさんは公共投資を増やす方針を打ち出していたから、この会社はオバマ支持ということでしょうか。というか彼らにとってはほとんど規定路線のようなものらしい。インフラの整備と再整備は経済における唯一の明るい材料とまで書かれている。

Building Design紙でも「オバマ、変革の建築家、が勝利」(2008年11月5日付、この反応の早さ)などという記事があった。彼の公約のひとつが、ホウイト・ハウスに都市政策オフィスを創設して、大都市圏戦略をねり、アフォーダブル住宅をたくさん建設するというものだ。プリントすると10数頁になるそのマニフェストもダウンロードできるのだが、ブログでその解説までする余裕はないので、記事のサマリーをさらにサマリーする。オバマさんは、アフォーダブル住宅基金を創設する、ヘルシー・プレイシズ法により地域コミュニティが開発などのインパクトを評価できるようにする、郊外スプロールにより生じた社会問題と戦うために高密度プランニングを支援する、都市計画をもっと中央集権的にしてひとりの都市政策長官が連邦レベルの開発計画をすべてチェックできるようにする、エコロジーも協力に支援してリサイクル、公共輸送に力をいれて建築もサステイナブルにしてエコな新しいものを推奨する、云々。

おなじ記事にはアメリカの建築家たちの反応が紹介されていた。「経済危機は緊急の課題だが、オバマ氏(のみ)が強調した、インフラ再整備の課題はほんとうに重要。アメリカの橋、道路、鉄道はもうぼろぼろ。エコの取り組みも重要」。「学校建設に力をいれることは、建築にとってもいいこと」などなど。

オバマさんのマニフェストのなかにも、アメリカのインフラを抜本的に再整備する、アフォーダブル住宅を力強く支援する、などの項目がある。

・・・などなど。

いろいろご意見を伺っていると、次期大統領はあまり日本に優しくないんじゃないか、という声が多いようです。また大局的にみて、20世紀以降は資本主義/社会主義という両極構造があって、旧社会主義諸国は資本主義化したが、こんどはアメリカが社会主義化する番だなんて皮肉もある。

じっさいENR.comの記事(2008年11月7日)によれば、新大統領のすべき(するだろう)最初の仕事は、ブッシュ時代の政令を転換して、連邦プロジェクトにおいてもユニオンの声が反映されるように戻す、建設工事において雇用者ではなく被雇用者に有利な法制を確立することであるらしい。選挙においてもユニオン・メンバーの67%はオバマ票、30%がマケイン票であった。

都市政策マニフェストをのぞくと、どれも必要なものであろうが、新しい概念、これぞ21世紀というものはない。インフラ(再)整備も20世紀初頭に強調された概念だ。アメリカはいちはやくそれを整備したので、いちはやく劣化し、だからいちはやく再整備しなければならない、というのはわかる。また21世紀はよりモビリティが求められるというのも通説どおり。またアフォーダブル住宅というものも、もちろん時代が違えば文脈が違うのですが、100年前なら社会的住宅といったり、もっと端的に低家賃住宅などと呼んだものに相当します。

でもアメリカ産業界は、インフラ再整備がいまのところ考えられる唯一の経済カンフル剤だと考えているなんて、本当かい?断片的にのぞき込んでの印象ですが、ITバブル、住宅バブルとつぎつぎに崩壊し、いまのところインフラ整備頼み、そこにソフト会社もビジネスチャンスを見いだし、ユニオンもそこへの発言力を再確保しようとする・・・・。いくつかの記事はちゃんと円環を描いてつながっている。ぼくとしてはこの指摘をよく憶えていて、4年たったら点検してみましょうか。

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