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2008.11.12

ウツォン一家がシドニー・オペラハウス改装で難儀している

ヴァーチャル朝刊でウェブ版Building Design紙をのぞいていたら、この記事(2008年11月11日付)。この有名建築の改装をめぐって親子げんかか?

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昨年、改装工事が公表され、ウツォンの息子ヤン(Jan)が取り組んでいる。ヤンの息子Jeppe(イェッペ?どう発音するか知りません)との間の応酬である。

Jeppeはブリティッシュ・プレキャスト「コンクリート創造性」賞に父の代理として出たさいに、この改装はオリジナル作品を汚すものであり、祖父も父ももうこのプロジェクトに関わるべきではない、と爆弾発言をした。改装はデザインのパッチワークであり、とても混乱していて、危険であり、また祖父や父の名声もさることながら、建築の純粋さをそこねるものだ、という。改装を受け入れたことは奇妙だ、ともいう。

父Janは、劇場とは何十年も関係は悪かったが、デザイン・コンサルタントとしてふたたび指名され、Richard Johnsonと共同で取り組んでいる。息子は、このプロジェクトに参加してはおらず、正確な情報を与えられていないので、そのような非難を口にするということは、独自の建築家として自律したいということであり、若い建築家はよくそういう態度をとるものだ、というような寛容な?反応を示した。そして資金ができたので、父(Jeppeにとっては祖父の)の設計原理にしたがって修正しているのであって、父と私とRichardの関係はとてもよい、と念を押した。

ウェールズ建築大学の学長Richard Westonは、ウツォン研究家でもあるが、もちろん改装には賛成である。「ジョンソンだってウツォンのデザイン原理を忠実に守ろうとしているよ」と保証した。

・・・以上が記事のあらましである。

なお同じBuilding Design紙の2008年4月2日の記事が、改装工事についての初出である。この記事では、1960年代、ウツォンがかさむ工費の事情から、建設途中で担当を辞任し、地元建築家Peter Hallが引き継ぎ、インテリアなどを完成させた経緯などを説明している。現在、音響効果改善、キャパシティ強化のための工事は、ウツォンとその息子、地元建築家の共同である。工費は3億2000万ポンド。もっとすくない工費で別の場所に新築したほうがいいという議論もあるそうだ。

ウツォン辞任の経緯は、1966年建築雑誌において佐々木宏さんが紹介している。自分の意志を貫徹できないのなら辞任するといったようなことだ。またオヴ・アラップは継続したことについては若干疑問視している。

建築家はプリツカー賞、サイトは世界遺産、ということになれば、建築家の名前はいやがおうでも高まる。また建物は、彼の名前を記念して命名されたそうだ(確認しなければ)。

ウツォン一家がずっとやっていたことは、歴史上もよくある建築家一族のようなもので、とくに驚きません。しかし遺産のうえにあぐらをかかない孫は偉いかもしれない。偉大な建築家の家系はいろいろあるが、この場合、子どもや孫はつらいだろう。先代が偉大すぎるのである。孫の反応もわかるような気がする。

ともあれ世界遺産に認定された建築を、その当の建築家が再整備できるということは、まれにみるラッキーなことです。歴史を現代につなげるといういい事例です。またものの文化的価値のみならず、それを設計した人物の才能を讃えるという美しい習慣。

日本の近代建築をどう評価するかという点でも、歴史的価値は、その作品がいちど過去のものとなって歴史の審判を経てないと認められない、などと変なことをいう人がいる。そういう人物は自分では気が付いていないが、じつは、彼自身がみずから意識のなかで現代と過去を切断しているのである。連続/切断というのは、事実性の問題ではない。歴史を見る人間が、どちらの意識で見るのかという、態度の問題である。

建築は、思想、理念、理論の反映として認めらねばならないし、しかも、時代が変わると評価も変わってゆくが、しかしこうした思想や理念を、刻々と変化する物差しで測ってはいけない、ということである。では、どう判定するのか。まず、歴史はどんどん展開し、価値観は変わってゆくが、ある時代を象徴するものとして、評価する。これは相対主義。また個々の判断をこえた、上位の審級を設定して、そこに位を上げる。つまり芸術、文化、という超越的なレベルを設定する。実際のところ、この超越的な性格、あるいはどこまで超越的であるか、がカギではないか。啓蒙主義でやってます、などという説明は本音であろうなどと思うわけである。世界遺産、あるいはフランスなどの文化帝国主義にみなければならないのは、この普遍主義である。うがった見方をすれば、みずからが所有しているコレクションの価値をなにがなんでも上げてゆく、という徹底した思想である。

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