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2008.11.29

ディジョンよいとこ

パリにてディジョンを回想する。

ディジョンでの資料蒐集はとりあえず終わり。研究ではいつもそうなのだが、資料蒐集には終わりというものがない。ひとつの資料を読めば、新しい研究テーマがうかび、それもひとつではなくいくつか。もちろん期待が裏切られたりで、淘汰されることはあって、すべてが研究になるわけでもないが。ともかくも調査するにしたがって、必要項目は増えてゆく。食べれば食べるほど食欲がます美食のようなものである。

それで結局、なにが打ち切りの基準になるかというと、結局、研究発表についてのこちらの事情だったりする。これはこれで情けなが、しかたない。

ディジョンの17世紀の都市プロジェクトは、王室のバックアップ、ブルゴーニュの主体、であるにもかかわらず、100年たってやっと完成する。

西洋史の専門家は、政治的対立、制度的矛盾があって、都市計画が円滑にすすまなかった、というような理解をする。そうだろうか?西洋史の専門家こそ、建築や都市計画については、まだ現代的センス普遍なものとし、それをそのまま歴史的に遡及しているにすぎない、とぼくは考える。そうではない。むしろその錯綜したプロジェクトの過程のなかに、歴史があり、真実があるのである。

文化遺産的にいえば、ひとつのプロジェクトの最初が文化財になって、最後がまだ完成されていないときに、全体としてはどうするのだろうね。フランスは、歴史の現代につなげるというマルロー哲学が生きていると思われるから、思想的には大丈夫だと思われる。

さらにいえば、1世紀をかけてプロジェクトが完成してから、10数年で革命がおこり、体制はまったく変わってしまう。つまり空間と機能が一致していたのはわずか10年とちょっとなのだ。それまでは未完成であり、完成状態の10数年がすぎ、やがて転用としての200年がすぎ、さらに現在、別の転用としてディジョンの中心を占める。

これが制度的には文化財として受け入れられるのは、ある特定の時代を代表しているとか、そんなみみっちいことではない。むしろこの建築は、大文字の歴史を内包しているのである。さらにさまざまな芸術を包み込み、事件を目撃し、人びとの人生を見守ってきた。それはすでにひとつの超越的な存在となっている。そしていまパリにおけるルーヴルのような立場の美術館として改装されている。

歴史的な建物の現代への応用などといった計画学的な理解は皮相なものであろう。そこでは建築、あるいは空間が、自律的であり、かつ超越的である。擬制のように思えても、超越性が思念されているのは否定のしようがない。

ディジョンのひとびとはとても親切であった。

市立図書館では、ぼくは登録カードをつくるときに、研究テーマなんかどんどん説明してしまう。すると司書は司書で、いろいろしっている。誰それ教授は偉いんですよね、なんていうとそうそう、あなた、この本を知っているんですね、でもこれは知らないでしょ、是非読みなさい、なんて閲覧希望をしていない文献もよこしてくる。結構これが新しい研究テーマのヒントになったりする。やはりフランクに話してみるものだ。

Img_0218 

アーカイヴ(↑写真)の人もとても親切。まったく同じような感じ。

古本屋でも丁寧に探してくれて、1975年刊の文献を見つけてくれた。感激。

パリではすくなくとも10回に一度はけんもほろろを体験して、こちらの態度が横柄なのかなと反省するのだが、ブルゴーニュというかディジョンではまったく雰囲気が違っていて、よかった。

地方でも首都でも同じなのだが、デジタル化は図書館やアーカイブの風景を変えた。みんなPCをもちこみ、デジカメでどんどん撮影している。読解スピード×持ち時間において圧倒的に不利である短期滞在の外国人研究者のみならず、ご当地のひとも同じである。

デジタルな時代になっても、読書空間に良さは圧倒的である。図書館はふるい教会内陣を転用したものだ。気持ちがいい。とにかく集中できる。

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アーカイブはふるい屋敷で、ブルゴーニュ地方総督の建物であったらしい。閲覧室は、1766年にモーツァルトがコンサートを開催(↑部屋)した部屋。といっても、広さは学校の教室ほど、でも天井は高い、といった感じ。古典主義時代のことを調べているぼくにはとてもフィットする。

レストランの食事もぜんぶ当たりだったし、日本的基準ではビジネスホテルに相当する宿にもプールはあるし、展覧会で図録を買うとおまけまでくれるし、ほんとうにディジョンよいとこ。

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