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2008.11.20

ホテルのプール(フランス編)

海外で仕事をしている知人と話していて、ふと疑問に思ったので、大航海時代の水夫はほんとうに泳げたのだろうか?ときいたことがある。こんなことは、じつはだれも知らない。命がけの水夫たちが泳げないはずはない。でも、常識のワナで、けっこうカナヅチがいたらおもしろいだろうね。

もちろん先史時代から人類は泳げたはずで、聖書など古代の文献にも記載はある。日本近世では「読み書きそろばん」だが、古代ローマでは「読み書き水泳」であったそうで、教育を受けていない人間をつかまえて「あいつは読めない泳げない」と揶揄する習慣があったそうだ。

しかしそれでも水泳は近代スポーツであることにかわりはない。というか「スポーツ」は近代特有のものだ。観光、登山、などがそうであるように。常識ていどのことを書くと、アーサー・トラジオンが南アメリカ大陸の原住民の泳ぎ方をみて近代クロールを原型をつくったのが1873年。オーストラリアの原住民のバタ足をとりいれてクロールが進化したのが20世紀初頭である。

前後するが1896年にアテネで第一回近代オリンピックが開催されたとき、水泳はその競技であった。しかしこの時点では、クロール、バタフライなどはまだ確立されていなかったことになる。また国際水泳連盟ができたのが1908年。

水泳/プールの広がりは、国民教育・初等教育の枠組みにおける体育教育、国民皆兵、軍事訓練、それからもちろん臨海レジャー、避暑、バカンスの発展、といった広範囲な文明の展開が背景となる。だから公共プールは20世紀にどんどん建設されたのであった。そしてホテルにプールが設置されているのも理論的には、驚くことではない。根は同じなのである。

ところで、事の成り行きは本人にとっても予測できないものであって、最近ぼくはプールへのアクセスがいいかどうかで、宿を選ぶようになってしまった。

というわけで11月15日はパリはリヨン駅近くの某ホテルで、泳ぐ。ここはリヨン駅北側の再開発プロジェクトということで建設された最近のホテルで、設備はまあまあ。フィットネスの事ジム、サウナ、プールなどがある。こんなものを利用するのは数の上では一部の人びとだが、つねにだれかが汗を流している。プールは地下にあって、空は見えないが、雰囲気はよい。ぼくがいったときは、家族が一組。母と娘が、泳ぐというより、水浴びをしてはしゃいでいた。べつにこのホテルに限らず、欧米のホテルのプールでは、黙々と泳ぐひとはあまりいない。ここでもプールサードではこの家族のご主人がフルートを吹いていた。ベートーベンも奏でていた。プールだから音が反響して、管楽器はまことによい。すこしだけ泳いでさっさと引き上げたが、いい雰囲気でしたねえ。

Piscinegare

11月17日はブルゴーニュの州都にあるホテルで、泳ぐ。中産階級料金ホテルなのにプール!ここは100年前に建設された建物だが、最近改装してプールをつくったようだ。中庭を利用している。すこし変わったつくりである。まず全体がL字型である。さらに既存建物のなかなので、輪郭がでこぼこして、気をつけないと、プール内部に張り出した角にぶつかりそうになる。ここは公共プールではないから、壁が近いサインやなんかが底にマークされてもいない。インテリア的には雑音がなくすっきりしている。でも事故や苦情がでないかなあ。年に1度は、だれかが頭を壁にぶつけているはずだ。さいわい、ぼくではなかった。

さらにこのプールには橋が架かっている。この橋をわたって、客は食堂に移動し、朝ご飯をいただく。朝、泳ぐひとないない(だろう)。夜、朝食をいただく人はいない(理論的に明白)。だから橋とプールは排他利用なのだ。こうしたわけでプールは経路として利用されている。おお、これは熊本県にある馬見原橋ではないか、新潟の潟美術館のプールではないか、などと反芻する。

でも泳いでみると、クロールの腕が橋にぶつかりそうで、こわい。

それから原油高と、伝統的に無駄をしないフランスにあって、水温が低いことは理解できる。つめたい。しかし少し泳ぐと暖まります。でも、塩素が強そう。

それからプールの規格。公共プールなら長さ、深さが決められている。フランスのプールはとても深い。大人でも足が底にとどくエリアは限られている。こんな規格に準拠していなくてもいいはずのホテルのプールが、なぜこんなに深いのだろうか。浅くすれば経費削減できるのに。

などと考えながら、黙々と泳ぐ。プールにぼく一人。ばしゃばしゃばしゃばしゃばしゃばしゃ。読みも泳ぎもできるぞお。

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