パリの新しいアート・センター
ウェブ版ル・モンドの記事(2008年10月11日)によれば、パリ19区オベルヴィリエ通り104番にアートセンターができた。
これはもとあった葬儀施設を改装したもの。石造壁体と鉄骨小屋組の典型的な19世紀建築。
施設名は「104」。社会党市長のもとの市の文化政策の灯台的な存在となるもの。国の財政支援は縮小されたが、市は強力にてこ入れ(こなのあたりが国/市の伝統的な力関係)。芸術家たちに創作の場所をあたえ、だれからのアクセスも許すことで芸術を民主化するための施設。100㎡ほどのアトリエが19室。劇場も。基本的にはアーティスト・イン・レジデデンス。すでに各国から申し込みが殺到しているそうな。
この地区は失業率17%と高く、活性化が望まれる。
市からの補助は800万ユーロ。しかし400万ユーロは自前。テナント(カフェ、レストラン、書店、劇場、ファッションなど)からのあがりに期待している。
続報ではオープニングの盛況ぶりも報道されている。イギリスのミュージシャンTrickyを招いてのオープニング。多数集まり、ホールにはいれた5000人のほか、あぶれたひといた。
・・・・・今はやりのアーティスト・イン・レジデデンスがパリにも、といったことだが、ここの文脈では別のようにも見える。つまり19世紀からここは芸術をしっかりと産業として位置づけていた。だから芸術家向けのアトリエ付き集合住宅が、普通のアパルトマンのなかにまじって建設されていた。ちなみにル・コルビュジエのアトリエハウスは基本的にはこれらを先例としている。
つまりパリではアートはしっかりと産業であり、それを大前提として、個人の才能を支援するという伝統が、近代初頭からある。この産業として認知されているということが、最大のアート・インフラである。
日本でも横浜市などにはアートを政策のなかに取り込む積極性がある。だがパブリックアートの時期を経過しても、まだアートは社会や都市とは一線を画するものだという認識がある。
パリのこの施設の利点は、当然、マーケットが近いということであろうね。
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