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2008年9月の2件の記事

2008.09.19

今年の「文化遺産の日」のテーマは「遺産と創造」

建築学会大会の1日目の終わりました。宿に戻って休んでいると・・・休みすぎて寝てしまい、夜中に目が覚めた。そこでWEBで暇つぶし。

フランスでは9月20日と21日は「遺産の日」であり、有名な文化財指定の建物は無料で公開される。

モニトゥール誌の2008年9月18日にはその記事が書いてあった。著者はAdrien Pouthier氏。

抄訳してみよう。

遺産:個人所有の不動産の危機

フランスでは9月20日と21日は25回目の「文化遺産の日」である。テーマは、歴史的文脈で、現代建築をどうつくってゆくか、である。とくに指定文化財が個人不動産である場合、その維持経費の不足が大きくなっていることが問題視されている。

公開物件は1万5000件。訪問者は去年は1千200万人、ことしはもっと。25回目の成功であろう。今年のテーマは創造と遺産。既存の条件にしばられていても、現代建築はそのなかで大きな成果をあげるのである、と文化相の説明。例としてペイのルーブル宮ガラスのピラミッド、フォスターのメゾン・カレ神殿わきの現代美術ミュージアム。しかしそれほどうまくいっていない例ももちろん多い。「創造」も重要。しかし単純な保存でさえ、とても込み入った作業なのである。

数的には、個人所有の指定文化財は全体の半分ほどである。しかし遺産のためにあてられる3億ユーロの予算のうちに、たった7%があてられるにすぎない。フランスには文化財遺産もこなす企業連合(180社をたばねる)やDemeure Historiqueなる3000の個人所有遺産をまとめる組織がある。彼らは予算不足から、これらの文化遺産が劣化してゆく危機にあることを訴える。しかし国家予算は削減の傾向にある。だからいろいろな目的税が新設されるかもしれない。たとえばインターネット・ゲームに課税するとか・・・

・・・などということで、いろいろ大変です。日本における教育予算の国家予算にしめる割合は先進国で最低だそうで、文化にかける予算もどんどん少なくなってゆく。フランスでもおなじことで、教育予算も、おそらく文化予算も削減傾向である。ルーヴル博物館も、とっくに独立法人のようなものになっている。だからいろいろ世界戦略を派手に展開している。

大会のテーマのなかでも、公共建築のストック化、さらには文化遺産化が考えられるなかで、公共団体が管理維持できなくなったものは民間の手にゆだねられるが、そのときに公共財としての位置づけはどう守られるか、などという議論があった。

民間委託もひとつの選択肢であれば、新税創設などもそうであろう。勝ち組にターゲットをしぼった新税創設もいいかもしればい。これはフランス流。しかし寄付をするモチヴェーションをうまく工夫すれば、アメリカ型のやりかたもできるかもしれない。お金はあの世までもっていけませんよ、だから寄付して名前を残しましょ、とかね。

明日は、いやもう今日ですが、建築史の研究懇談会があります。どうなることやら。

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2008.09.17

マルセイユが2013年ヨーロッパ文化首都に選ばれた

一カ月ぶりの投稿ですが、忘れられなかったかな?

なぜさぼっていたかというと、引っ越したからです。

地域の中核都市F市の、有名な商店街のただなかに引っ越しました。ぼくは小学生のときまでは田舎に住んでいて田んぼのあぜ道をとおって小学校に通っていたのですが、体質的には都会にあっていることを大人になって発見しました。なのでスーパーまで5分、コンビニ3分、いや商店街は小宇宙なのであって、クリーニング、饅頭屋、中華、インド料理、岩盤浴(いきませんが)などが半径100メートルにおさまっている環境がとてもいい。部屋の対面にはアメリカンハンバーグのお店があって、朝から晩までアメリカ50年代・60年代の懐メロをかけている。ロネッツのビー・マイ・ベイビーとか、ポール・アンド・ポーラとか、そんなのをまったり一日中街頭に流している商店街なんてそうないね。隣の商店街には有名なリアカー隊などもある。いわゆるアジア的。屋台のようにこれもやがては消えるのかな。

住んで思い出すのは(たいへんキザではございますが)留学時代。裏通りでしたがレストラン街があって、その上の貸部屋に住んでいた。夜、暗い部屋でベッドに横たわっていると、ナイフ、フォーク、お皿のカチャカチャ触れあう音がさやしく聞こえてくる。それが癒しなのでした。そこまでお上品ではございませんが、この街の住み心地もなかなかのものです。田園的環境のなかの戸建てで庭いじりなど、ますますメディア依存になるだけで、恐怖でございます。人間は町に住めばよろしい。

部屋は某超大物建築家が気合いを入れて設計した、入魂の物件。ぼくはとても気に入っています。ありがとうございました。

公共施設。区役所など何度もはいきませんし、警察署も免許の書き換えしか用はないし、ほんとですよ、敬老センターはまだはやいし・・・といったところです。しかし総合図書館まで自転車で5分というのもよい。アマゾン、グーグルが便利といったって、やはり紙の素材感あふれる文献がずらり並ぶのはよい。不意な出会いもあるしね。なにげなく手にした本が面白かったり。そんなとき、この本は、ぼくに読まれるために10年も20年も待っていたんだな、なんて自己中になったりします。

フィットネスも徒歩5分。メタボ対策、リハビリもばっちりだね。フィットネスの近くに引っ越したかったんだ、といってもだれも信じないだろうね。

というわけで(どういうわけで?)ボルドーが当選すると個人的には嬉しかった2013ヨーロッパ文化首都は、2008年9月16日、マルセイユの手におちた。

Le Parisien紙によれば・・・

9月16日、マルセイユが選ばれた。このことに、まずマルセイユ・プロヴァンス商工業会議所の会長Jacques Pfisterの、それからマルセイユ市長Jean-Claude Gaudin (UMP)の喜びの声が紹介された。次点はボルドー、リヨン、ツゥールーズ。ツゥールーズはエアバス・インダストリーなど企業から支援をうけていたが、落成で失望の声。ボルドーは落選にもかかわらず市長Alain Juppéはこれまでの努力は無駄にはならない、と強気。「おめでとうマルセイユ」と余裕をみせた。リヨンも落胆しつつ参加都市をたたえた。記事では、「ヨーロッパ文化首都」制度の紹介も。1985年にヨーロッパ評議会の音頭ではじまった。ヨーロッパの人びとどうしをより親密にし、経済を加速し、さまざまなインフラを発展させること。これまでに2008年はリヴァプール、 Stavanger(ノルウエー)、2009年はリンツとヴィルニス(リトアニア)が文化首都。

モニトゥール紙では、もっと詳しく紹介されている。

2013年のヨーロッパ文化首都としてマルセイユマルセイユ・プロヴァンス商工業会議所の会長の挨拶からはじまる。市長の挨拶は紹介されていないのが、実行部隊のありようを示している。もうひとつの文化首都はすでに選ばれており、スロヴァキアのKosineである。マルセイユのプロジェクトは、地中海文化圏を想定して、ヨーロッパと南方の国々との交流、ユーロメディテラネという概念を提案するもの。旧港などを含む6キロ㎡のサイトに、ヨーロッパ文明博物館、地中海地域センター、などいくつかの文化施設を建設するもの。隈研吾の現代美術センターも含まれる。マルチメディアセンター、公文書館も。あとは地元政治家の賞賛の声も紹介されていた。右も左の喜びでいっぱいのよう。

どうでもいいようなことだけれど、マルセイユは商工会議所のおやじ、ボルドーは市長が筆頭にきているという点がおもしろい。これは歴史的な面白さでもある。

マルセイユとボルドー。どちらも本質的にあるいは歴史的に、商業の町であり、交易の町である。産業、すなわち工業と製造業の世紀であった19世紀と20世紀、これらの都市は斜陽化する。しかしふたたび世界ネットワークそのものが活性化されると、網の結節点であったこれらの都市は復活しそうになる。ヴェネツィアほど極端ではないのがよい。しかし都市が歴史の荒波のなかを泳いでゆく、そういうしたたかさの連続を描いてゆく、そういう歴史叙述もあっていいだろう。

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