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2008.05.17

競売にかけられる近代住宅

WEB版ルモンド紙の記事(2008年5月17日17時28分アップ)によれば・・・

5月13日、NYの有名なクリスティ競売場で、リチャード・ノイトラが1946年に建設したカウフマン邸が、1680万ユーロで売却されたそうだ。またシカゴにあるライト(あのライト?)なる販売会社は、ルイス・カーンが1959年に建設したエシャリック邸を競売にかけるそうだ。

この競売は来る5月19日だそうで、お金持ちの日本人のみなさん、押しかけましょう。

そういえばシカゴ郊外のファンスワース邸もイギリス貴族のものであった。

フランスでも近代住宅を美術品扱いして競売にかけるのはブームだそうです。数ヶ月前に建築コレクション・パリ代理店なるものができて、20世紀、21世紀の作品を取り扱っているそうです。記事は面白くて、20世紀の巨匠建築家は「ライオン」、21世紀の若手有能建築家は「ウルフ loup」なんて形容されている。まるでカサ・ブルータス的なノリですね。1998年に設立された同種の代理店atelier, Lofts & Associesの代表者Nicolas Libertは「不動産とってもアートですよ。建築的価値によってアート市場における・・・」と指摘している。

インターネット上にアート扱い近代住宅の主要物件が掲示されており、専門家=鑑定家がいろいろ説明しているようだ。

ル・コルビュジエのヴィラ・シュタインも100万ユーロという値がつけられているのだそうだ。1億5000万円というと、安いなあ。ぼく的にではなく、相場として。

オープンハウスもやるらしい。その他、詳細は上の記事を参照してください。

・・・で、ぼくはこういう現象は、世界遺産の裏表でしょう、と思います。文化的価値、資産価値、建築的価値、遺産価値、けっきょくは同根であり、計測するモノサシを変えているだけです。メートル、インチ、尺、キロなど。

ちなみにイタリアでは国宝的存在が民間に売却されたということで、問題にされた事件があったらしい。それは文化財や世界遺産といった公共的な枠組みなのか、このクリスティのような民間的枠組みなのか、違いがあります。もちろんその間のせめぎ合いがあります。

しかし近代住宅の価値を認めているということは共通しているし、大きい。

それから欧米ではすんなり受け入れられる概念として「建築的価値」があります。これは「芸術的価値」に準ずるものですが、アートほどは純粋ではないがそれなりに、建築も、アートにはない価値があると求められているようです。

しかし日本では「建築的価値」そのものはまだ認知されていない。建築は「芸術的価値」や「歴史的価値」を認められて、はじめて文化財やなにか価値あるものとして認められる。つまり日本では、建築はまだ翻訳の対象であるような気がします。

いずれにせよ日本における世界遺産は、世界といいながら、国策としての展開だから、クリスティのようなダイナミックな資本の動きとは関係がないでしょう。

でも日本は昔はまだダイナミックであった。福田和也『日本の近代(上)』(新潮新書2008年4月20日)でも紹介されていますが、岡倉天心がヨーロッパ滞在中に日記をつけているが、それはまさに画商として美術品のマーケットにおける値段の上下を観察し、日本からなにが売れるか、懸命に観察するものであったようです(p.165参照)。

つまりクリスティ的状況は、明治のころの岡倉天心的状況なのです。なにも変わっていないような気さえします。ところが、国が指導しなければなんともならない状況なのでしょうか。

ついでにいえばイームズ自邸は子孫がファンデーションを創設して必至で遺産を守っています。

日本は、相対的にですが、文化を守ってゆく民間というか個人が弱体化しているようです。あるいはお金持ちの方々が、しばらくそっちの方面を忘れていたからかも。だからいっているのです。お金もちの方々はクリスティに押しかけましょうと。

あるいは日本のIT長者や、不動産長者に嘆願して、国内の近代住宅競売マーケットをつくってもらう。建築家物件代理店をつくってもらう。いや、もうあるのかな。すでにあれば教えてください。

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