« グラン・パリ構想はやはり国が主導するのであろうか? | トップページ | ヌーヴェルで思い出したので『ジャン・ヌーヴェル、すなわち媒介する建築』を再録させてください »

2008.05.28

ジャン・ヌーヴェルがラ・デファンスのコンペに勝った

まずWEB報道(Le Moniteur2008年5月27日)の抄訳から。

"la Tour Signal"(ラ・トゥール・シニャル)だからランドマークタワーなのでしょうが、直訳すると信号機塔、でも赤・黄・青でもなく、国旗の三色でもないような。都市軸にそってさらに郊外に拡張するゴーサインなのでしょうか。ともかくもヌーヴェルの仕事がひとつ増えた。

ジャン・ヌーヴェルとスペインの投資グループ、メデア、ライエタナ、のチームはシニャル・タワーのコンクールに勝った。ジャック・フェリエ、N・フォスター、D・リベスキンド、J・M・ヴィルモットをおさえて。ラ・デファンスはパリ西部のオフィス街で、設立50年にあたる。高さ300メートル、まさにこの街区の象徴的機能をも果たす。

D3sbl93hsnouveuneok 2

パトリク・ドヴジャン(オ=ド=セーヌ県議会議長、ラ・デファンス整備公社社長)によればこの建築は「グラン・パリを象徴する建物」となる。

ヌーヴェルは「グラン・パリの中心は唯一ではなくいくつかあるであろう。ラ・デファンスは歴史的街区のない中心地のひとつの最初の表現となる・・・」

建設費6億ユーロ、竣工2013年予定、延べ床14万㎡のなかに、オフィス、高級住宅、公共施設、商店、レストランなど。

このオフィス街ではこれまで、Cnitとグラン・アルシュが象徴的存在であったが、このタワーは第三の象徴となる。もっとも同規模の高層建築も他に構想中。灯台タワー、など。

今回、最終選考で選に入らなかった案もいくつか建設されるかもしれない。敷地は全部異なるからである。J・M・ヴィルモット+センチュリア融資グループ+ブイグ不動産は、ラ・デファンスの南門近くに。ジャック・フェリエ+エルミタージュ(ロシア)はすでに用地買収を開始して、竣工は2010年。

さて、愚見です。

グラン・パリに向かってスタートはすでにきられたのであろうか。けっこう関係者は意識している。国、自治体の騒ぎ方は、むしろ投資を呼び込むためのお祭り的宣伝なのかもしれない。またそのように機能してしまうであろう。世界の投資家のみなさん!どんどんパリに投資しましょう!ということでしょうか。

ジャン・ヌーヴェルは少なくともグラン・アルシュのコンペのころから挑戦し続けていたので、やっとプロジェクトが実現できそうで、おめでとうございます。20数年前のいわゆる「テット・ド・ラ・デファンス」では立体グリッド案であったが、これはナント市の裁判所で仇をとったのかな。「終わりのない塔」と呼ばれる10年ちょっと前のプロジェクトのほうも面白かったな。上にゆくほど透明感を増して行くタワーで、空のなかに消えてしまいそうな、ポエティックな外観、新しいランドスケープを演出したであろう。ただ内部空間はありきたりかもしれなかった。

とはいえ20年前のプロジェクトは、パリからの大都市軸をそこで終わらせよう、という位置づけであった。しかし新凱旋門は、中央にボイドを持ち込むことで、フランスが好む古典的形態を実現させつつ、それまで欠けていたモニュメンタリティを与えつつ、門、という象徴性、そして都市軸をさらに延長する可能性を残していた。

現在のマスタープランは、大都市軸をここで終わらせず、さらに延長しようとするものである。建築空間の力が、都市計画に影響を与えるという、ヨーロッパ的現象である。

当選したヌーヴェル案は、超高層でありながら、キューブ4つを上下に積み上げ、キューブのひとつひとつがアトリウムを内包しており、そこが人工的・立体的な広場、公共空間になるというもの。箱形のグラン・アルシュの隣にあると、なじんでいます。このアトリウムは、パリ方向、ピュトー方向への大都市軸とほぼ平行なので、このボイド空間(それぞれテーマが違っていそうだ)のかなたに既存都市を感じられる、結構なものになるでしょう。(おそらくヴォイドのひとつをコアにして、空中のゲイティド・コミュニティができるのではないかと想像している)。

このラ・デファンス地区は、オフィス空間を集中させることで、古都パリを機能的に補い、外国からの投資の受け皿になるという立場であって、国内投資は全体の数分の1なのだそうだ。そういう意味ではパリの出島のようなものである。いっぽうでそんなに居心地のいい町でもない。シカゴのようなハードボイルドさもない。むしろヌーヴェルは、キューブとボイドというなかに古典的スケールを導入した、そのことが建築的意味を担っているように感じられる。

|

« グラン・パリ構想はやはり国が主導するのであろうか? | トップページ | ヌーヴェルで思い出したので『ジャン・ヌーヴェル、すなわち媒介する建築』を再録させてください »

Paris」カテゴリの記事

コメント

ヌーベルの向かい側には、建築家グループのモーフォシスが建設予定のビルも立ちます。そのビルはコンピューターグラフィクスで解析された有機的な形態をしており、ヌーベルの幾何学的な塔との対比が非常に象徴的な印象になるのではと思っています。(幾何学的塔と有機的塔に挟まれる新凱旋門も興味深い)ぼくも去年ラ・デファンスにいきましたがその頃とはまた違ったものになるのでしょう。

投稿: 佐藤信 | 2008.05.28 13:58

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/424713/21228999

この記事へのトラックバック一覧です: ジャン・ヌーヴェルがラ・デファンスのコンペに勝った:

« グラン・パリ構想はやはり国が主導するのであろうか? | トップページ | ヌーヴェルで思い出したので『ジャン・ヌーヴェル、すなわち媒介する建築』を再録させてください »