続報、第二のトゥール・シニャル
ジャン・ヌーヴェルのトゥール・シニャル速報はしましたが、続報がはいってきました(Le Moniteur 2008年5月28日)。落選案?についてです。
抄訳から。
不動産開発業者エルミタージュ(ロシアのストロイモンタジュ社の系列)は、ジャック・フェリエ案をあきらめない、と宣言。
エルミタージュが指摘するには、自分たちの案は実現される価値があるので、クールブヴォワに建設するし、ラ・デファンス整備公社社長パトリック・ドヴジャンもすべてのプロジェクトは実現される価値があると言っていた、と強調。たしかにドヴジャンは落選案も別の可能性があることを示唆していた。とくにフェリエ・エルミタージュ案についてはいい案で、セーヌ川岸にあるといいかもね、と。
建物は(Hermitageにちなんで)H字型の外観である。
ところでクールブヴォワには社会的住居がある。Damiers d'AnjouとDamiers de Bretagneであり、250戸の中間家賃住宅(PLI, prêts locatifs intermédiaires)と40戸の社会的家賃賃貸住宅(PLS, prêts locatifs sociaux)があり、【訳注:日本でいえば市営住宅があるようなもの、市営そのものではないが】、パリ交通公社(RATP)の系列のロジ・トランスポールの所有である。住人やこの会社はコンペをたいへん心配していた。自分たちが追い出されるかもしれないからである。
エルミタージュはプレスで声明を発表し、居住者全員を再入居させる、すくなくとも同等の、あるいはすこし上のランクの住居に、と述べた。一時転居のための場所を受け入れた21世帯もあり、51世帯分のも確保され、のこりの178世帯も提案をうけるだろう、と。
タワーは多目的。勤労、居住、余暇、・・・・住居、ホテル、レストラン、オフィス、店舗、温泉、文化施設、ホール・・・。環境、エネルギー、対策も万全。HQEと一種の建築環境アセスメントであるBREEAM (Building Research Establishment Environmental Assessment Method)の証明書も取得する予定。
感想。
落選案にもチャンスが与えられるのも、それらが投資をもたらすからである。
公金を使ってのコンペなら、当選案のみ、これは当たりまえ。ラ・デファンス整備公社は、独立採算が原則のはずだから、赤字を税金で埋めるようなことはしない。だから投資グループは大歓迎なのでしょう。
しかし今潤っているロシアの資金を使って、ラ・デファンスに高層建築をつくる。もとからいた、公共政策として準備された社会的住宅に住んでいる人びとは追い出されるが、でもまあ、荒っぽいことはされず、ちゃんと再入居させてもらえる。そうしなければ一騒ぎおこるのだろうけれど、これは金持ち喧嘩せずなのですね。
でもまあほんとうにHermitageのHなのだろうか。最近世界中で建設されている超高層のなかでは特筆されるものではありません。
さて、仕事。
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