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2008.05.24

グラン・パリ構想はやはり国が主導するのであろうか?

ともかくも「大パリ計画」の展覧会が、来年あたりパリで開催されるかもしれない、といったようなことですが。2006年あたりから国や自治体でこのプロジェクトを熱心に議論しているようです。

Grand Parisと書くと、グラン・パリ、大パリということでグレーター・ロンドンみたいな言い方になる。しかしGrand Pariは、グラン・パリと読んで、「大いなる賭け」という意味なのだな。1980年代にフランソワ・シャランが『ミテランの大パリ(大きな賭け)』というシャレた?題名の本を出版して、当時はじまっていた大統領のグラン・パリ計画を解説していた。どちらかというと好意的な立場ではあった。

補助線を引いておくと、かつては小パリ=保守派・右派、大パリ=革新派・左派、という構図であった。今は逆のようだ。どうも保守/革新ということでもなさそうだ。もちろん地方分権、グローバル化、という下から上からの流れの変化のなかで、パリという特殊な都市もいろいろ行き先を模索しているようである。

どこが特殊かというと、1970年代にジャック・シラクが市長になるまで、パリには市長がいなかった。中央集権国家の首都ということで、首都は国家事項なのであった。とはいえパリは独自の意志をもっている。このあたりが、面白いところなのだが。

さらに市町村、県、地域圏、国、欧州という多層構造のなかで、小パリをふくめた広がりの枠組みを決定するというのは、従来にはなかった問題であるからだ。

ボルドーの都市共同体は、市町村と県の間にある。しかしパリの場合、パリは市町村の地位にありながら、パリを含む連合は、県と地域圏のあいだの位階にならざるをえない。類例のない枠組みづくりである。

20世紀までの、国家と都市の対立は、国とさまざまなレベルの地方自治体との対立というかたちにより錯綜している。しかしやはり、国主導でしかありえないようです。

とりあえずWEBをだらだら引用してみる。Le MoniteurのWEB記事からである。

>>>>>2008年4月9日の記事。セーヌ=サン=ドニ県代表上院議員フィリップ・ダリエは、パリを中心とする4県融合案を提案した。これは市町村、地域圏の存在を脅かすものではないと強調。理想的解決ではないが現実的、という弱気の自己評価。

>>>>>2008年4月15日の記事閣外大臣ロジェ・カルチは、「グラン・パリ」について、2008年末までに計画の骨子を決め、2009年にはあたらしいガバナンス形式を決めるのであって、国がリードして法制化しなければならない、という態度である。フィリップ・ダリエの4県融合案は大失敗になるだろうと、反対。ジャン=ポール・ユション(社会党、イル=ド=フランス地域圏議会議長)はビジョンがないと切って捨て、ベルトラン・ドラノエ(社会党、パリ市長)はパリ独裁と、批判。「ガバナンスの信奉者ではない」と自認したうえで、クリスチャン・ブランの首都圏閣外大臣就任を紹介。

彼が考える具体的プロジェクトは、「メトロフェリク」(パリの外側の環状地下鉄で8~10年以内に完成)、「エコポリス」、エコ地区、東部に大規模なオフィス・センター、大規模な大学キャンパス、など。

>>>>>2008年5月6日の記事では、ロベール・スピジチノなる専門家が、諸勢力の構図を開設している。セーヌ=サン=ドニ県代表の上院議員フィリップ・ダリエは県など自治体の力が弱いと指摘。県議会は、地域圏を補強、新たな方向付けで問題に対応できると回答。サルコジ大統領は、首都圏特任の閣外大臣のポストを創設することで、あくまで主役は国だということをはっきりさせた。土木の大物ジャン・マルク・オフネールはすでの『ル・グラン・パリ』を出版して詳しくデータを分析した。建築家ポール・シュメトフとフレデリク・ギリはDIAT(国土整備のための省庁間組織)の要請で、フランシリアン(パリ地方の意)の空間を分析した。

国=文化通信省は、国の内外から意見聴取をしようとしている。スローガンは「京都議定書以降の21世紀のメトロポリス」で、スタディの結果を展覧会にする計画。ジャン・ヌーヴェルは、ガバナンスなどの観点からこうした大パリ計画に前向きであることを表明した。SDRIFやPLUといった現行都市計画についての議論はまったく価値がないと、IAURIFやAPURといった都市計画事務所も意見を表明した。いかなる種類のガバナンスか。ロラン・カストロなどは「グラン・パリ・コンセプトの父」を自称する【訳注:ミテランのグラン・パリのこと】。国が音頭をとって意見聴衆する背景には、地域の左派政治家はこのような構想をする能力はなく、国だけがその任に堪えうる、という考えがみえみえである。この意見聴取では、サステイナブル、環境などは配慮されているが、経済規模、ゲットー化、多文化性、生活様式の発展、などは考慮されていない。クリスチャン・ドヴィレ、レム・コースハースは意見を表明しなかったり、表明することがパリの現状に不適切であることを表明し、正面からの回答を避けた。

・・・・ロベール・スピジチノとしては、市民的、共和的議論をすべき、という。組織改編と、市民参加を呼びかけており、まさに彼の主張は、市民的であり共和主義的である。彼は地方圏議会には好意的で、クリスチャン・ブラン(この大臣はやがて意見表明する)には懐疑的である。

>>>>>同日(2008年5月6日)の記事では、パリ市長ベルトラン・ドラノエが、意見を表明した。この現職のパリ市長は、「グラン・パリ」という表現が嫌いであり、その首長になる意志もない。むしろ「パリ・メトロポール」が好きで、「間市町村=インテルコミュナリテ」の信奉者である。つまり独立した地方自治体の共同体がいい、という主張である。彼はパリ周辺29の市町村の長を集めた会合を2006年から開催しており、連合の形式をいろいろ模索中である。たとえば都市共同体(パリと123の市町村)、パリを含む4県を融合する、自治体連絡協議会の形態、など。ただ周辺自治体にもパリ・メトロポール案に反対意見もある。周辺部はパリのねぐらになるだけ、といったハウジング問題は大きいようだ。この自治体首長会議は、国のグランパリ計画が2009年に法制化されるか法案が出るかなので、それまでに意見表明しなければならない・・・。

>>>>>2008年5月13日の記事では、首都圏開発を担当する閣外大臣クリスチャン・ブランは就任2ヶ月後、5月13日、大パリ計画について声明を発表した。「ガバナンス」にもとづくプロジェクトだが、「国」はほかのパートナーと同格というわけではない。インフラ、交通機関の整備。2030年がめど。新しいかたちの財政方式、すなわちPPP(partenariat public-privé )【訳注:おそらく伝統的な混合経済のかたちを変えたもの、株式会社方式ではない官・民資金の結合方法】、「地代騙受」などというアングロ=サクソン方式の導入。すなわちインフラ整備、施設整備による地価上昇による利益を、整備事業に還元する。こうしたことを念頭に置いて、意見聴取をはじめる。ミッションの中心人物はピエール・ヴェルツ(ヨーロッパ領土開発整備高等研究所所長)。

>>>>>Le MoniteurのWEB記事(2008年5月22日)によれば、「パリ都市圏の大いなる賭け」のためのスタディ・開発のための国際ヒアリングがなされた。38人の建築家が回答した。そのうち10人が選ばれた。誰であるか、公表は6月3日。しかし「ル・モニトゥール誌」は大胆にも、独自の情報源から予想を出している。それによると;

ポルツァンパルク、ジャン・ヌーヴェル、イヴ・リヨン、ロラン・カストロ、アントワーヌ・グランバック、ジャメル・クルーシュ、リチャード・ロジャース、MVRDV、フィン・ガイペル、ベルナルド・ゼッキである。当然ほとんどフランス人だが、イギリス、オランダ、イタリアから各1エントリー。

2007年9月17日に建築・遺産都市の開館式においてサルコジ大統領は、グランパリの包括的再整備のための新プロジェクトを望み、そのために国際ヒアリングをすることを表明した。問題意識、戦略、理論、理念などを共有するためで、サルコジによれば「京都以後の21世紀のメトロポリス」を構想するためであった。(・・・おやおや「京都議定書」って日本で考えるより、時代の転換点として重要視されているのですね。)

意見聴取の暫定スケジュール:(*実体・実態を知らないでの訳語は適切でないかもしれません)

2008年6月3日:選ばれた建築家たちによる最初の会合
2008年9月15日:専門部会の調整会議(のようなもの)
2008年9月16日:スタディ作業の第二期の始まり
2008年11月07日:コンセプト決定版、活動計画の中間報告
2008年11月14日:専門部会の調整会議・第二回目(のようなもの)
2008年11月17日:スタディ作業の第三期の始まり
2009年01月09日:活動計画の決定版
2009年01月16日:専門部会の調整会議・第三回目(のようなもの)
2009年01月09日:建築・遺産都市における展覧会

意見聴取の背景。2006年に文化通信省が構想して大スケール建築(AGE)についての省庁横断型スタディを開始した。エコロジ発展サステイナブル整備省、などが参画。

・・・などなど。

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