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2008.05.17

イームズ自邸を見学したことを思い出した

ちょっとまえにイームズ夫妻記念切手のことを書いた。そこで2000年のアメリカ観光旅行を思い出したりした。LAには1週間いて、ニュービートルなんかを借りて、あちこち見にいった。イームズ自邸もね。

いまではEames Foundationなんかがあって、そこのHPでこの自邸の略史などが説明されている。それによると夫妻はもともとアパート住まいの延長のようなものを考えていた。エーロ・サーリネンとの共同設計であった前身計画は「ブリッジハウス」と呼ばれ、写真はみてないが、大地と切り離されたものだっただろう。で夫妻は「牧草地meadow」と恋に落ちてしまい、今のようなデザインとなった。

ふたりが大地に目覚めた経緯のようにも読める。でもそれは現地におけるぼくの実感どおりなのであった。

ケーススタディ・ハウスとしてとても有名であり、日本では岸和郎さんたちが本を書いていた。ぼくは撮影した写真の虫干し的公開でやってみましょう。

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この建築の本質は、宅地造成である。基本的にはここは斜面でしたが、すこし土地を削って、そこは擁壁にしてある。これが空間をつよく区切っている。さらに建物に平行に樹木を一列に植えている。この樹木と建物のあいだが通路となっている。

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フラットな大地。それが本質です。イームズさんたちにとっての「牧草地」ですね。

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この旅行ではLA市内の美術館もたちよった。そこでイームズ展をやっていた。家具が中心で建築もちょっと、って感じかとおもっていたら、彼らの撮影したスライドは素晴らしくきれいだった。グラフィックなセンスがすごくあるのだ。この自邸もこのセンス抜きに考えられない。

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クリックして拡大してください。こうしたグラフィックなセンスが全体を支配しているように思える。写真の撮り方によっては、立面はモンドリアンもどきになる。もっともこれはぼくがそう意識して撮影するからなおさらである。日本建築をモンドリアンもどきで撮影した写真があったでしょう。

ところが興味深いのは、平面つまり床、土地などでもまた、グラフィックなセンスが展開されている。ここは徹底的に、床と庭がおなじレベルにされている。するとグラフィックとして処理できる。いうはやさしいが、室・建物の内外、そこは土、植物、レンガ、セメント、鉄(柱)、床タイル(石?)が遭遇するとてもクリティカルな局面だ。イームズさんたちはそれにヒエラルキーをつけず、彼らの得意のグラフィックに呼び込むことで、うまく美しく処理している。

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ミースのファンスワース邸も、H鋼の支柱を大地にどうつなぐか工夫していた。土台となるコンクリートを地面すれすれにして、ほとんどないがごとくで、大地にH鋼がそのまま突き刺さった、いわゆる掘立ての外観だ。建築家はそこまで気をつかう。もっとも近くで見れば、土台ははっきり確認できますけどね。

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これなんかは日本の踏石みたいですね。玉砂利もあるし。しかし日本の踏石は庭と縁側というように違うレベルを結びつけているが、ここではあくまで平面的。ミースのようにピュアに切り離すのではなく、雑多な要素がそのまま露出している。しかしその面をそろえることで処理している。

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こうした素材の突き合わせ。イームズさんたちはメイソンリーもカーペントリもほんとうは嫌いだったんじゃないか、と思いたくなる。

それから、グラフィックなセンスと書いたが、これはものづくりのセンスでもある。イスをデザインしていたことと、やはり関係がある。つまりデザインは、異質な素材の出会いにとても気をつかう。継ぎ手、遊び、収まりなど。素材と素材の突き合わせかたが、やはり通常の建築からはすこし違うように感じられる。もっともぼくは構法のプロではありませんから、あくまで美学的なことですが。でもそういう意味で鉄骨はうってつけの素材であった。

それから土地をそのまま床にした点が特徴だろう。太田博太郎先生流に、住宅は高床か縦穴(接地型)に分類できるとしよう。前者の代表はファンスワース邸。後者はたとえばこのイームズ邸であり、ライトの住宅であろう。つまり土間型の内部空間と暖炉の組み合わせは、アメリカの伝統であり、アメリカそのものといっていいだろう。

そういう意味で、この住宅にとって決定的な一手は、宅地の造成にあった。

・・・なんて感じで、スライドショーをやるのも、ブログネタになりそうですね。

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