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2008.03.31

「平戸プロジェクト」の考え方

2008年度「ランドスケープ・プロジェクト」(演習)と「ランドスケープ論」(講義)の内容とスケジュールです。これら講義と演習をあわせて「平戸プロジェクト」と仮称します。

(1)スケジュール(■をクリック)
01 6月06日(金)集中講義
02 6月13日(金)平戸ツアー
03 6月20日(金)プロジェクトの提案など
04 6月27日(金)エスキス1
05 7月04日(金)エスキス2
06 7月11日(金)エスキス3
07 7月18日(金)クリティーク

(2)対象 九州大学・芸術工学部・環境設計学科・3年

(3)担当   常勤=片野、福島、土居
               非常勤=松岡、塩塚

(4)ランドスケープと歴史をどう理解するか

網野善彦は、70~80年代、都市史研究の深化のなかで中世都市論を展開し、百姓≠農民というまったく新しい説を述べた。日本の伝統的ランドスケープ=水田とその村落という通念はかならずしも普遍的ではなく、それは天下統一者の年貢至上主義的な、管理農業的な理念が反映されたものであったという。網野は、それとは対照的な、管理されざる自由空間を、堺、港町、市場、などに発見した。無縁・公界・楽であった。貿易、廻船産業が生む空間は、共同体と共同体の狭間に存在する、管理されざる自由空間であり、そこに大航海時代の世界性とそのシステムのなかでの日本の位置づけを物語る。

安野眞幸(あんの・まさき)はこの論をさらに発展させ「港市」論を展開した(国際貿易都市・平戸、自由都市・長崎)。港市=間共同体な空間という枠組みのなかで、さらに宗教はたんなる内面の救済にとどまるどころか、交易活動を推進するための教えとしてきわめて現実的に機能していった。

西和夫は、こうした海からの日本史という観点をいかして、「建築から海を見る」あるいは「海から建築を見る」という枠組みで、出雲大社、三内丸山遺跡、長崎出島、平戸オランダ商館などについて論考してきた。それは「海から見たランドスケープ」「海をみるランドスケープ」というおおきな枠組みを提供してくれる。

それゆえ:
「稲作=共同体内的ランドスケープ」(日本的ランドスケープ)は、伝統的に日本の為政者たちが必要としてきたイデオロギーであったといえる。それは必然的に農本主義的、村的、土着的、定住的である。
「港・港市=間共同体的ランドスケープ」(異国的ランドスケープ)は、それに対し、伝統的に日本の為政者たちが、経済的に必要としながら、宗教的、文化的、外交的、国防的につねに注意を払いつつ、コントロールしようとし、ときには破壊しようとしたものであった。それは交易的、都市的、グローバル、流動的、交通的である。

「教会のもたらすランドスケープ」が、後者のなかでは、その間共同体性をさらに強化してゆく。

(5)文化遺産としての建築をどうとらえるか?

現代の歴史的建造物、文化遺産の概念をつくったのはおもにフランスである。

古建築の保存(001)革命から王政復古まで----革命による建築破壊への反省。シャトーブリアンロマン主義の基礎を築いた。いわゆる文学的・ロマン主義的保存運動。

古建築の保存(002)七月王政----ヴィクトール・ユゴーの古建築擁護、古建築保存のための政府委員会、「目録」。

古建築の保存(003)修復家と博物館について----ヴィオレ=ル=デュクらの修復概念、様式概念が生まれた。「歴史的記念物建築家」の制度ができた。

*ヴィオレ=ル=デュクの重要性。伝統的建築を破壊して、近代建築が登場したという理解は一面的。古建築修復のためのスタディのなかから、普遍的建築の概念が形成され、近代建築の理論を提供した。保存運動が、近代建築を生んだともいえる。

古建築の保存(004)指定と登録について----保存の対象は、しだいに広がっていった。

「歴史的建造物」と「遺産」---「遺産」とは、建築、メディア、アーカイヴ、文献、埋蔵文化財などの上位概念、メタ概念である。「遺産法典」とは、従来のいくつかの法律を体系だてたもの。

建築をどう評価するか?

これまでは建築の、歴史的価値、文化的価値、芸術的価値を評価してきた。

これからは建築の建築的価値を評価できるようになるかもしれない。イタリア、フランスではずっとそう。英米では新傾向。

(6)プロジェクトへの展開

ランドスケープの歴史的変遷をふまえたうえで、平戸の文化財ストックをおさえたうえで、「文化施設」プロジェクトを構想し、考案する。しかしこの場合:

「施設」とは、具体的な建物のみを意味しない。それは文化を気づかせるあらゆる装置であり、それが都市や自然の空間のなかに配置される。だから建物、公園、都市空間、メディアも文化施設である。さらには町並みそのもの、景観そのものが、文化であるとどうじに、啓蒙する装置である今日、オブジェクト=メディア、という等号がなりたつ。

学生にはしかじかの課題、プロジェクトが与えられるのではない。各教員はそれぞれプロジェクトを提案するが、それはヒント、枠組みにすぎない。学生は、そうした導きの糸を参考にしてよいが、まず、いかなるプロジェクトが平戸に有効であり、文化的価値を高めるか、を提案しなければならない

(7)サイト  平戸。その周囲の教会建築と集落。

(8)細部
・課題=平戸を景観、都市史、建築史、文化財、まちづくりなどの観点から多角的に分析し、どのような建築的介入が景観や都市に有効かを考えさせ、設計させる。
・イメージ=教会堂を中心とする町並み、それをとりまく農地、丘、河川というのがヨーロッパの典型的ランドスケープのひとつ。その読解も確立している。また教会堂を中心とするまちづくりも例は多い。したがって教会建築を主エレメントとして景観が構成されている平戸は、よき教材を参照しつつプロジェクトを展開できる。
・課題文言「平戸の都市と景観をスタディするなかから、どの場所にどのように介入すべきかを提案し、それを建築として設計しなさい」(例)

(9)学生に提供できる観点、授業テーマなど
・西洋の景観概念「象徴としての景観」「理想としての景観」など
・教会堂を中心的要素とする西洋都市の景観(実際の都市、絵画に描かれた景観)
・教会堂と都市の空間的関係(ヨーロッパの諸例から、多様な関係が可能)
・教会建築の基礎知識
・日本の木造教会堂の構法的理解
・伝統的都市建築の構法的理解
・「長崎県の教会」世界遺産暫定リストのことなど
・文化的景観の概念
・都市史、町並み
・「海からの日本史」の観点から平戸が注目されてきたこと
・海からの景観
・今の都市平戸が抱える問題点。自治体の文化政策など。
・場所の発見。介入すべき場所を、学生に見つけさせる。教員は場所を指定しない。
・介入方法の発見。機能、プログラム、減築か新築か、など。学生が選んだほうがよい。

(10)提出物リストと注意

●提出の注意:

すべてPDFファイルとし、メール添付で提出してください。紙での提出は受け付けません。PDF化は情報基盤センターでできます。なお、「チェックリスト」にあるひな形をカット・アンド・ペーストし、カスタマイズすると便利で正確です。

PDFファイル

「メール件名」=「添付PDFファイル名」=「添付PDF内記載(レポートタイトルに追加して書く)」とし、下記の様式を厳守してください。
             学籍番号 氏名-日付(6桁)HRDP講義1(KW)
講義課題  1DS12345G塩原芸子-080606LSL1(クロード)
演習課題  1DS12345G塩原芸子-080606LPD1(クロード)

提出先(←クリック):片野、土居、福島に同時に同一物を提出。

非常勤の先生が参加されれば、これに非常勤講師のアドレスが追加されます。

●提出物チェックリスト:下記のファイル名(例)を、カットアンドペースト、編集して、それぞれメール件名、添付ファイル名にすることを推奨します。簡便、正確です。
□提出1:講義課題1,2,3、演習課題1,2,3。〆切6月11日(水)。
1DS12345G塩原芸子-080606LSL1-3(絵画・平戸略史)
1DS12345G塩原芸子-080606LPD1-3(KW●)

□提出2:講義課題4,5、演習課題4。〆切6月18日(水)。
1DS12345G塩原芸子-080613LSL4-5(海からの景観など)
1DS12345G塩原芸子-080613LPD4(平戸サーベイ)

□提出3:講義課題6、7。〆切6月25日(水)。
1DS12345G塩原芸子-080620LSL6(フランス)
1DS12345G塩原芸子-080620LSL7(香港・豪州)

□提出4:エスキス内容。演習課題5。〆切7月2日(水)。
1DS12345G塩原芸子-080627LPD5(エスキス1)

□提出5:エスキス内容。演習課題6。〆切7月9日(水)。
1DS12345G塩原芸子-080704LPD6(エスキス2)

□提出6:エスキス内容。〆切7月16日(水)。
1DS12345G塩原芸子-080711LPD7(エスキス3)

□提出7:最終提出。〆8月11日(月)
1DS12345G塩原芸子-080718LPD8(プレゼン)

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