フランスの裁判所
たぶん2000年であったと思うがナントの裁判所を見学した。ジャン・ヌーヴェルの作としては、それほど評価されていないようだが、なかなかのものであった。まだ開館しておらず、また開館していても観光客など入れないのだが、そういうわけで外だけみた。もともと製鉄関係の施設があったという場所らしく、スチールをふんだんに使った、黒ずくめの、新古典主義である。しかし正面の庇は、柱も細く軽やかで、広々といている。これは見るための建築ではなく、つまりルドゥ的な「語る建築」ではなく、そこから都市を見るためのフレームとして機能する枠組みとなっている。
さて以下はフランスにおける裁判所の歴史である。建築の背景にすぎないので、ご興味なければ無視してください。
高等法院(Parlement)とは、旧制度時代は最高裁判所である。政治的・行政的役割をはたしていた。最高裁判所として、前判決を不服とする控訴を受けいれる控訴院であり、最高裁判所として前判決を破棄する破棄院であった。それらは第三身分の民事と刑事にかかわるものであった。そのほかに貴族同士の起訴を調停する役割もあった。
そもそも中世初期、王はクリア・レギス(Curia Regis)を主宰し、王国のあらゆることを取り扱った。王権の展開とともに3機能に分割され、コンセイユ・デュ・ロワ(Conseil du Roi:政治)と、会計院(Chambre des comptes:経済)と、高等法院(Parlement、パルルマン:司法)となった。13世紀に発足したパリ高等法院は、15世紀まで王国の全領土に権威を及ぼした。
1250年頃。パリ高等法院成立。
1319年、聖職者は高等法院のメンバーにはなれないこととなった。
1345年、オルドナンス(王令)によって組織形態が最終的に決められた。
1422年より地方にも設立、18世紀までに13の高等法院が各地域に設立された。1462年、ボルドー高等法院。1477年、ディジョン高等法院。1553年、ブルターニュ高等法院(レンヌ、ナント)。これらの設立にはそれぞれ経緯があって、地域の事情を反映している。各論にはおってふれる。
教会との関係。前述のように1319年法は聖職者を追い出した。こうして高等法院は、王国がフランス教会を教皇から守るための機関となった。宗教改革と反宗教改革のあいだ、高等法院はトリエント公会議の教義がフランスにもたらされることに抵抗した。
王との関係。高等法院は王命を登録し、あるいはそれにたいして建言する権限があった。ゆえに高等法院は、君主制をコントロールできる権利をもつようになる。フロンドの乱はその象徴的な事件であった。パリ高等法院は王国における財政管理権を要求する。世襲制であったので、また英国議会を模範として、2院制とし、ひとつは選挙制にすることを要求した。
1673年、ルイ14世は王令が登録される前に高等法院がそれにコメントすることを禁じた。高等法院は抑圧化にあった。1715年に王が没すると、高等法院は摂政フィリップ・ドルレアンと交渉した。建言をする権利をふたたび持つため、ルイ14世の遺言を破棄することを要求した。
1750年より高等法院は、課税のまえの平等といった、王権による改革を阻止する。ルイ15世は高等法院の数を減した。1771年、高等法院は政治的機能を取り上げられた。しかし1774年、ルイ16世は高等法院を招集してしまったので、その高等法院の反対にであうようになった。1780年代の高等法院の活動は革命への序曲となった。しかし革命のよってその活動は停止した。1790年より国選の裁判官制度となる。
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