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2007.11.15

フランスの有力建築家たちがモニトゥール誌への掲載を拒否しているそうな

 今日もストである。動けない。ネットサーフして、おもしろい記事はないかと探す。すると下記が目にとまった。

 WEB版ル・モンド紙(パリ時間15日12時半)によると、フランスの有力建築家たちとこれまた有力な建築専門書籍の出版社であるル・モニトゥールとが対立している。

 同社がやっている建築賞に「銀定規賞」というのがあって、これは「建築におけるゴンクール賞」であるとされているが、10月22日に決まった2007年の銀定規賞は、無名の建築家の控えめな作品に与えられた。ル・モニトゥール・グループは選出の理由を「建築的なスタンドプレーをやめて、基礎的なことに立ち戻ろうとしている」と説明している。

 ちなみに写真はその銀定規であるが、□○△である。なるほど建築の基本形態である。

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 建築家たちはこれに抗議文をだした。彼らは、建築的創造というものをスタンドプレーと日常的建築との対立に解消しようとするものであり、建築家たちが展開してきた込み入った思索を否定するもの、批判する。

 彼らは対抗措置としてル・モニトゥール誌が出版する年報(AMC)の2007年版に、自分たちの建築の写真を掲載することを拒否している。また自分たちで出資して固有の年報を2008年1月に出版するのだ、と力んでいる。名乗りをあげた建築家のなかには、 Frédéric Borel, Jérôme Brunet, Jacques Ferrier, Manuelle Gautrand, Rudy Ricciotti, Marc Mimram, Nicolas Michelin, Ibos et Vitart など著名人がおり、対抗年報がでれば本家のものの内容が薄くなるのは避けられない。

 ル・モニトゥール誌の建築部門長でありジュリイのメンバーであるFrédéric Lenne氏は、ジュリイの選択を説明するよう求められているだけで、この賞が問題視されているのではないと、強気である。ル・モンド誌によれば、建築業界の「不透明さ」が問題なのであって、論争は避けられない、とのことである。

 ・・・ぼく自身は建築賞の選定などにはかかわったことはないが、雑誌の特集などで、建築家の作品を選定することはある。だからまったくの人ごとではない。このように建築家有志が抗議するということは、私企業の出す賞でありながら、すでに公共的存在となっており、ゆえに透明性と説明責任が求められる、ということを、抗議者自身が認めているということである。ただぼくの作品を写真掲載させませんよ、というのは、強気ですね。なにか宮廷闘争的な雰囲気がします。

 よく考えてみると、日本にも企業、企業広報誌、学会、自治体、マスメディア、国などが建築賞を出していている。誰が賞をだしているか、ということはあまり考えていない。賞は、脱利益還元的、脱イデオロギーを指向するという暗黙の了解があるからだろう。また賞はいろいろあるので、選出に不満があってもいちいち抗議はしないものだ。これがコンペなら違うのであるが。

 選ぶ側の問題もいろいろあって、本当に選出理由など練っているのだろうか。ぼくはある有名新聞社に3年連続でひそかに打診され、××××氏の作品はどんな点が評価されるんですかね、などと聞かれい、ろいろ答えてきた。基本的にぼくは建築家擁護の立場であることも言っておこう。しかしこんなヒアリングもいっそのこと透明化すればどうだろう。

 日本における問題は、表現や思想をめぐって建築家たちが連携するような契機も機構もないということであろう。それぞれの設計活動は活発でありながら、思想はまったく個別に表明する、おたがいに干渉しない、というスマートな棲み分けが発達している。

 フランスのこの例は、賞を与える側が、なんらかの釈明をしなければならないことを意味する。賞を出す主体が、はっきり立ち現れる、ということだ。日本でもときどきこんなことをすれば、人様を選ぶ立場も、すこしは襟を正そうというものであろう。フランスも日本も、まだまだ不透明であるようだが、フランスのほうが論争好きということか。

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