【書評】「かくれキリシタン」聖画巡回展実行委員会『栄光の歴史-「かくれキリシタン」聖画展』大伸社2003/ちいさなパンフレットのなかの広い世界
展覧会の図録であるが、20数頁からなるパンフレットである。展覧会の実行委員長はカトリック大阪大司教区補佐司教であり、後援は在日のスペイン大使館、ポルトガル大使館、バチカン大使館、日本サラマンカ大学友の会、である。展覧会そのものは2003年が日本の聖イグナチオ教会とスペイン、2004年がリスボンで開催された。
3世紀近くにもおよぶ弾圧の歴史のなかで、かたくなに信仰を貫いたキリシタン、その信仰のよりどころとなった聖母子画などが紹介されている。ヨーロッパへの布教が、普遍化とどうじに土着化であり、聖母子という普遍的構図のなかに、キリスト教的教義やその土地のその時代の心性を描きえたことを考えるとき、和服とかんざしの聖母も当然の展開であった。この展覧会の開催にあたっては村野朋子さんの他にはかえがたいご尽力があったことを人づてに聞き、建築史をやっている者としてはある種の感慨があった。
巻末には世界地図が掲載されていて、リスボンから九州までの航路が描かれている。まだ弾圧がはじまるまえ、信者たちはローマのイエズス会総長に聖画の送付をもとめたという。おそらくそれは順調なら、ポルトガルのナウ船によって運ばれたことであろう。
ぼく自身はキリスト教徒ではないので迫害や殉教にことさら関心をよせるのも不謹慎というものであろう。ただ布教の世界戦略ということで、ある断面をはっきりと示していることが感じられるのである。すなわちイエズス会、ポルトガルが主役であったということである。そうした関連が今日にも生きているよいうことである。
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