« 【書評】西野嘉章『二十一世紀博物館』東大出版会2000/現在を歴史にいかにつなげるかというぼくのテーマにヒントを与えてくれた。 | トップページ | 学会から懇親会へ(福岡、2007年8月30日) »

2007.08.20

【書評】福岡伸一『生物と無生物のあいだ』講談社現代新書2007

 とくに生物学など興味はないのだが、この手の本は建築に引き寄せて解釈できるのではないかと考えて、読む。伝統的に、有機体は建築のモデルのひとつだからだ。

 DNAの自己複製機能と、しかし生命が機械ではないゆえんである「動的平衡」(ゆえに時間が重要なファクターになる)というのが2大テーマである。それだけだと乾いた説明になりがちだが、野口英世に代表される研究者の野心といった人生双六的記述をからめながら書いている。

 でも建築にどうやって引き寄せるのか?シェーンハイマーのいう「身体構成成分の動的な状態」すなわち人体を構成している分子は数ヶ月でそっくりいれかわってしまうことなどは、都市の恒常性と変動を説明するためのモデルとなりうるであろう。「秩序は守られるために絶え間なく壊されなければならい」という弁証法。ジグゾーパズルの「かたちの相補性」は都市という文脈のなかの建築を考えるうえでよいモデルとなろう。内部の内部は外部、というテーゼもそうであろう。建築は入れ子状の空間構成をとることがある。設計図の破壊、しかし動的平衡系の許容性、そこに介入する時間というファクター、そしてぼくにとっては援護射撃とでもいうべき「機械には時間がない、しかし生物には時間がある」というテーゼ。どれも美しい。魅力的だ。

 でももどかしい。ただちに建築に引き寄せることはできない。著者にとって建築はまだメタファーにとどまっているからだろう。彼の取り組んでいる生物学は、トポロジー的なもので、ほとんど生物学者=建築家などという見識も示される。しかし彼がまだ気づいていないのは、建築もまたメタファーを必要としており、建築と生命が互いに鏡像関係であろうとするその、一見安定しているようで、じつは不安定な関係にある、ということであろう。

 しかしそれでもソーク研究所や、ニューヨークの振動についての記述は、著者の才能が多方面に展開されるであろう可能性を示している。

                      ↓

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書 1891) Book 生物と無生物のあいだ (講談社現代新書 1891)

著者:福岡 伸一
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

|

« 【書評】西野嘉章『二十一世紀博物館』東大出版会2000/現在を歴史にいかにつなげるかというぼくのテーマにヒントを与えてくれた。 | トップページ | 学会から懇親会へ(福岡、2007年8月30日) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/424713/7610050

この記事へのトラックバック一覧です: 【書評】福岡伸一『生物と無生物のあいだ』講談社現代新書2007:

« 【書評】西野嘉章『二十一世紀博物館』東大出版会2000/現在を歴史にいかにつなげるかというぼくのテーマにヒントを与えてくれた。 | トップページ | 学会から懇親会へ(福岡、2007年8月30日) »