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2007.08.18

【書評】江副浩正『不動産は値下がりする!』中公新書ラクレ2007、朽木ゆり子『フェルメール全点踏破の旅』集英社新書ヴィジュアル版2006

 成城のメガネ屋までけっこう時間がかかる。車中で2冊斜め読みした。まず江副浩正『不動産は値下がりする!』(中公新書ラクレ2007)である。マイホーム購入指南書として書かれているが、首都圏の再開発、都心への一極集中、いわゆる「空間(=床面積)」のたえざる生産、フラット35だのJ-REITなど金融、などまじめに説明している、ある意味で教養主義的な文献にもなっている。空間、土地、床面積が生産されているとは、容積率の緩和、文化財の空中権(地上権の一形態)の移転、埋め立て、大学など大不動産所有者の資産運用、などにより、まさに空間が技術的というより制度的に増えることを意味する。こうした「空間」は市場原理により経済・金融に直結しているので、そこを理解しろ、という本である。具体的には低金利政策はそろそろ終焉を迎えつつあり、金利が上昇すれば、J-REITも利益を生まなくなる(もっともJ-REIT自体が、低金利時代のなかで比較的利率のよい金融商品であったわけで・・・)。だから金利が上がりますよ、不動産買うなら今ですよ、というならとくに目新しい指摘ではない。しかしむしろ逸話が著者の本音を語る。森ビルの森社長と学生時代からの知己であり、地域密着型のデヴェロッパーとして評価している。ある意味で正しい。さらにますます魅力をますニューヨーク、東京を評価する。これも正しい予測ではある。

 朽木ゆり子『フェルメール全点踏破の旅』(集英社新書ヴィジュアル版2006)は、数週間をかけて世界中の美術館を駆けめぐり、フェルメールの絵画を鑑賞するという企画にもとづいて書かれたものである。バブルの頃にあってもよかった企画であり、カサブルータスが建築特集をするのに雰囲気が似ている。芸術や建築が商売になる時代である。世界遺産現象とパラレルなのであろう。ただ著者がみずからジャーナリストとしての取材であると自覚しているので、良心は担保されている。絵画もまた政治やマーケットに支配されているので、ヒトラーや、アメリカのフリック財団のようなコレクターの意志により左右されたり、また宗教的な理由でイギリスのコレクターが集めやすかったなど、来歴の話がひとつの軸になっている。それとともに寓意と内面表現の関係など、わかりやすい指標で語られている。しかし絵画に「内面」が描かれているなどという仮説はいかにも白樺派的ではないのだろうか。問題はなにの内面か、という点である。そここが曖昧にされているので、いわゆる20世紀的な近代人が無自覚に前提にされているとしか思えない。

 二書に共通しているのは地球人としての著者たちのダイナミズムである。1970年代からくりかえし求められてきた地方の時代など永久にこないような気がする。

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